2022/10/22

【入れる重要文化財】歴史的建築物とシーボルトも入った大理石風呂~武雄温泉

一個人秋号web増刊号

宇於崎凌

写真撮影/増本雅人 取材・文/宇於崎凌

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 現在好評発売中の一個人秋号では、「至福の温泉ベスト30」として全国の珠玉の温泉を大特集。本記事・一個人秋号web増刊では、本誌で紹介しきれなかった各地の魅力を紹介する。

シーボルトも訪れた歴史ある温泉名所

 西九州新幹線開通で盛り上がる佐賀県。その停車駅のひとつである武雄温泉は、湯だけでなく、歴史ある建築物も魅力のひとつだ。1826年、江戸参府に参加したシーボルトは道中で熱心に日本の自然や文化の研究をした。その旅の冒頭でシーボルトは長崎から出島を出発し、雲仙、嬉野、そして武雄に立ち寄ったとの記録が『江戸参府紀行』に残っている。その武雄に関する記述の中で「この塚崎付近の温泉はまた武雄温泉の名で知られていて~(中略)~使節とわれわれは、肥前藩主の浴場で入浴する許可をえた」とあるのが、まさしく現在も武雄温泉に残る殿様湯だ。
 市松模様が並ぶ総大理石の豪華な装いに浴室は「殿様」の名を冠するにふさわしい風合い。階段の途中にある小部屋はその昔、風呂に入る前の「流し湯」をするための場所だったそうだ。現在では安全上の理由から封鎖されている。
 浴槽に注ぎ込まれるのは武雄の源泉がそのまま。高温なので自分で加水できるようになっているが、そのままでも入ってしまえば体が慣れてきて心地よい多幸感が体を包んでくれる。透明で素直なミネラルの匂いが漂い、すこしぬるっとするがすっと消えていく。出た後の身体は心地よい熱を帯び、軽くなったような心地が愉快だ。同じ建物内にある家老湯は、その名の通り殿様湯に浸かる主人の家来が使用する浴槽。こちらも温泉は同じだが、浴槽は大理石ではなく、階段にマジョリカタイルが使われている。

建物そのものが展示品!

 武雄温泉の楼門と新館は佐賀県唐津市出身で、東京駅も設計した建築家・辰野金吾による作品で大正4年(1915年)4月12日に完成した。いずれも現在では国指定重要文化財に指定されている。
 玄関にあたる象徴的な楼門は、天平式楼門と呼ばれ、釘を一本も使っていない独創的な建築物。2階の天井の四隅には子(ねずみ)、卯(うさぎ)、午(うま)、酉(とり)の彫り絵があり、東京駅の8つの干支を合わせると十二支が揃う。これがどういった意味を持つのかはわかっていないが、稀代の建築家による遊び心が感じられる。
 武雄温泉新館の中は数々の展示品を擁する資料館になっているだけでなく、現在は使用されていないかつての大衆浴場の様子がそのまま現存している。建物そのものが歴史を体現する展示品かのようだ。ちなみに、幻の浴室といわれる大正天皇のために造られた浴室が見られるとの情報がネット上で流れているが、現在公開されておらず現物を見ることはできないので注意。
【武雄温泉新館】
住所:武雄市武雄町大字武雄7425番地
電話番号:0954-23-2001
営業時間:10:00~18:00
休館日:毎週火曜日
入場料:無料

【殿様湯】
営業時間 10:00~23:00
※予約制ではありませんので、現地での順番でお入りいただけます。
1室1時間:3,800円(土日祝)
※平日割引料金:3,300円

【武雄温泉楼門内の温泉】
武雄温泉楼門内には
3つの男女別の大衆浴場(元湯、蓬莱湯、鷺乃湯)
5つの家族風呂(殿様湯、家老湯、柄崎亭内にある天平の湯・桜華の湯・芭蕉の湯)
があります。それぞれの詳しい情報は武雄温泉新館に直接ご確認ください。

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WRITTEN BY

宇於崎凌

うおさき りょう 武蔵野美術大学卒。『一個人』副編集長。@ryoworks_web

うおさき りょう 武蔵野美術大学卒。『一個人』副編集長。@ryoworks_web

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