2022/11/13

腸活の切り札は麹菌!~腸内善玉菌を増やす伝統発酵食パワーで免疫力強化!

ちょい出し『一個人』秋号

一個人編集部

取材・文/吉田さらさ、イラスト/朝倉千夏

この記事をシェア

 ただ甘酒を毎日飲むだけで体内で消化・吸収されにくい難消化性タンパク質=レジスタントプロテインが腸内で驚異の「働き」を見せる!

驚異のたんぱく質に注目最強の腸活食品は甘酒!

 米・麹こうじなどに含まれる「レジスタントプロテイン(以下、「RP」と略記)」は近年、腸内細菌叢を劇的に改善し、健康作用が期待できるたんぱく質として注目されている。ヒトの体内で消化、吸収がされにくい難消化性の食物繊維のような働きを持ち、コレステロールの排出促進、肥満抑制、美肌効果や排便促進、疾患を抑制する免疫機能の強化など健康効果が絶大だ。そのRPが豊富に含まれている食品のなかで甘酒は特に優すぐれていると言われているが、発酵食の権威で、RP研究の第一人者である尾関健二先生に腸活の切り札となる甘酒とRPについてうかがった。「米から日本酒を作る際に出た副産物である酒さけ粕かすを溶かして甘みを加えたものが酒粕甘酒です。この酒粕や麹甘酒には、RPが豊富に含まれています。レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)の存在は以前からよく知られていましたが、たんぱく質にも同様に分解吸収されにくいものがある。それがRP、すなわち難消化性たんぱく質と定義されたのは2000年頃です。07年には、酒粕にRPが多く含まれることがわかり、甘酒(麹・酒粕)にもRPが多く含まれていることが解明され、これを定期的に飲用することでコレステロールを下げたり通便をよくしたりするという報告を行ったのが18年です」。古来、私たちの暮らしにあった甘酒の知られざるパワーがより具体的に理解されたのは、ごく最近のことだったのだ。

世界的にも類を見ない劇的な効果があらわれた実験

難消化性たんぱく質レジスタントプロテインの特徴
① 健康的にコレステロール値を下げる
② 腸内環境を整える
③ 健康につながる免疫力を整える
【RPはどんな食品に含まれているのか】
蕎麦・大豆・米(一番強力なRP)・高野豆腐・酒粕・味噌など。甘酒はヨーグルトといっしょに食べると健康維持の免疫細胞にもスムーズに働きかけてくれる。
「RPは、なぜコレステロールを下げ、通便をよくするのか。それは、未消化のまま腸内に到達し、そこで余分な油や脂質を包み込んで吸収を抑える作用があるためです。その後、そのまま便となって排出されますが、脂分の多い便は柔らかく出やすくなります」と尾関先生。10年前、あるテレビ番組内で、12人の男女に、3週間続けて甘酒を飲んでもらう実験が行われた。すると、12名中11名の悪玉コレステロール値が下がり、全員が通便の改善を実感するという劇的な結果が反響を生み、店頭から甘酒や酒粕が消えたというエピソードもあった。近年、20代50代の男女25名に、RPを多く含む甘酒を30日間飲んでもらう実験も行われた。飲用前と飲用後に便の中にある腸内細菌を調べたところ、善玉菌の一種である酪らく酸さん産さん生せい菌きんの割合が12・9%から14・9%と、2%も上昇した(【図表1】参照)。腸内細菌の構成にこれほど大きな変化が認められた実験結果は、世界的にも類を見ない。これほどの効果をもたらす甘酒には、さらなる秘密が隠されていると尾関先生は言う。「甘酒の飲用によって増えた酪酸産生菌は、腸内で食物繊維などをエサにして増殖し、大腸内で酪酸という物質(短鎖脂肪酸の一種)を産生して、悪玉菌の増殖を押さえます。この酪酸は大腸を動かすエネルギー源でもあり、また、腸内の粘膜を守るバリア機能を強化する働きもあります」。つまり、酪酸なくしては大腸が正常にせん動しないということなのだ。「甘酒にもともと含まれているオリゴ糖は、炭素源として腸内細菌の栄養となります。オリゴ糖は野菜類などにも含まれていていますが、菌体を増やすためには炭素源のほかに窒素源も必要です。RPには炭素源に加えて窒素源も含まれています。腸内細菌のエサとなる炭素源と窒素源の両方を一度に摂とることができる甘酒は、何にも勝るプレバイオティクス(善玉菌を腸で育てる)食品と言えます」腸内細菌の状態がよくなれば、肌のきめも整い、免疫機能も強化される。コロナ禍の今、毎朝一杯の甘酒があなたを守ってくれるのだ。しかしながら、酒粕甘酒は日本酒を作る際の副産物であるため、アルコール分は少ないが、酒が苦手な人には飲みにくい場合もある。「麹甘酒のアルコール分はゼロです。最近の甘酒は以前より飲みやすくなりましたが、それでも気になる方は、炭酸水で割ったり、ヨーグルトに混ぜて食べたりなどの方法もあります。それでも苦手な方は、RPのサプリメントで摂っていただくのもよいです」と、尾関先生は言う。さらに、日本古来の麹菌が海外で研究され、相次ぎ実用化されているという驚愕の事実を教えてくれた。

米と米由来の発酵食品には日本古来の知恵が豊かだ

甘酒のもと「酒粕」が腸内で大活躍します!
超善玉菌を増やすレジスタントプロテインの働きは、腸内でパワー発揮。
①レジスタントプロテインは胃で消化されにくいため、小腸に直行します。
②大腸に入ると、脂質などの悪玉コレステロールを吸着。
③大便とともに余分な油分を体外に排出するのです。
 米と米由来の発酵食品は日本の伝統食の要かなめだ。日本独自の発酵食文化は麹菌なしには成立しない。すでに海外では医薬品として麹菌を利用しているのに比べ、日本では、その真の価値に気づいていないのではないかとも尾関先生は言う。「私が研究の拠点にしている石川県は麹文化の根付いた土地で、かぶら寿司やいしるなどの伝統的な食品があります。昔の人は、麹の働きを熟知しており、その科学的研究を始めたのは、明治時代の理化学の泰たい斗と、高たか峰みね譲じょう吉きち先生でした。今こそ、日本独自の発酵食に注目し、健康に役立つ方法を科学的に考えるべきです」現在、尾関先生は、日本酒に含まれるα-EGという成分の美肌効果についても研究している。この成分が多く含まれた純米酒を飲むことで肌コラーゲンの密度がアップし、ハリや弾力にもつながるのだという。日本の古来の発酵食がもたらす恩恵は、腸活を超え限りなく広がる。最後に、米由来の食品である酒粕や甘酒の日常生活での摂り入れ方について尾関先生はこう説明する。「一日に必要なRPの量は250㎎。したがって、米を一日に二膳食べるだけで、RPは十分に摂れます。米の摂取が少ない方は、足りない分を甘酒や酒粕で補おぎなえばよいのです。日本古来の主食である米の力を、この機会にぜひ見直してほしいですね」。
金沢工業大学バイオ・化学部教授 尾関健二さん
農学博士。ゲノム生物工学研究所研究員。岐阜大学大学院農学研究科修士課程(農芸化学)修了。大関酒造入社後、醸造資源研究所出向。築野食品工業企画開発室テクニカルアドバイザーを経て現職。専門は麹菌や酵母などの発酵・酵素利用、発酵微生物の分子育種、機能性食品・化粧品素材の開発など。
11 件

WRITTEN BY

一個人編集部

この記事をシェア

おすすめの記事