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●ちょっと立ち寄り【曽我北栄環状列石】

ニセコ曽我北栄環状列石から羊蹄山を望む。白龍が降臨したような不思議な景色。

 世界遺産に認定はされなかったけれど、ニセコにも素晴らしい遺跡があった。なんて、3000年前の縄文後期の人々が、墓域にしたのか?はたまた、祭祀の場にしたのか(わたしは弔いの祭祀を行った墓域だと思う)、日時計だったのか??石を並べた北の大地のストーンサークル。牧草地の中の囲いの中に、小さな石による輪がいくつも並んでいる。
 古代の人々が何を思い、これらの石を並べたのか?そう考えるだけで、ゾクゾクする。が、背中にゾクっときたのは、目線を上げると羊蹄山のすべてのすべての全容が見えたから。古代から神の坐す山として、畏れ、敬われてきたという羊蹄山。背中に沈んでいく夕陽を受けて、紅葉が紅く輝く神宿る山を真正面に据えると、その真下にあるストーンサイクル。
 ゾクっとしてしまうほど、神がかった景色。

 真後ろに夕陽が沈むということは、明け方にここにくれば、真正面に陽が登ってくるはずだ。ずっとここで景色の移り交わるさまを見ていたい。
 古墳時代の前に弥生時代があり、そのおおもとに縄文時代がある。
 そのつながりや、繋ぎ目にこそ、きっともっと面白いことがあるはずだ。その土地に立ち、大地に触れて、風景を見て、はるか昔、そこに暮らした人の息遣いを感じていく。古代旅の醍醐味はそれに尽きると思う。

【古代旅の先達からのメッセージ】

今回の旅のアドバイザー
札幌国際大学 縄文世界遺産研究室
越田賢一郎先生

「北海道・北東北の縄文遺跡群」が2022年7月に世界文化遺産に登録されて、まもなく1年を迎えます。これまで、多くの方が各遺跡を訪れてくださいました。
 北海道に桜の咲く5月から7月までの新緑の時期は、縄文人たちも長期間、雪に閉じ込められた生活から抜け出して、海では潮干狩り、森では山菜採り、山で獣を追いかける、そんな待ちに待った季節だったのでしょう。
落葉広葉樹林の中の芽生え、そして入江で展開される産卵と誕生、このような生命の営みとその再生の喜びが縄文人たちを突き動かしていたのだと思います。
 私たちもその血を受け継いでいます。生命の営みと再生の喜びを感じる旅こそが、アドベンチャー・トラベルになります。博物館で様々な遺物を見ることも大切ですが、実際に遺跡を訪ね、縄文人の感覚に触れてみてください。
 北海道には縄文人から引き継いでいる「食」、雄大な景色、そして縄文人も浸かったであろう「温泉」も楽しめます。
 この地には、縄文が身近なところに生きています。ぜひ訪れていただいて、古代からのメッセージに耳を澄ませてみてください。

越田賢一郎 コシダケンイチロウ
1948年 千葉県生まれ。立教大学大学院文学研究科修士課程修了、北海道教育委員会、(財)北海道埋蔵文化財センターを経て現在。札幌国際大学人文学部教授、札幌国際大学縄文世界遺産研究室室長。
専門分野は考古学、東北アジア史。著作に、『蝦夷島と北方世界-日本の時代史19』(共著、吉川弘文館、2003年)、『北海道の歴史 上』(共著、北海道新聞社、2011年)、『北海道の古代・中世がわかる本』(共著、亜璃西社、2015年)など。

(左)『蝦夷島と北方世界-日本の時代史19』(共著、吉川弘文館、2003年、3200円)、(右)『北海道の古代・中世がわかる本』(共著、亜璃西社、2015年、1900円)

協力・株式会社国際交流サービス

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郡 麻江

こおり・まえ 古墳ライター。 時々、添乗員。京都在住。得意な伝統工芸関係の取材を中心に、「京都の人、モノ、コト」を主体とする仕事を続けながら、2018年、ライフワークと言えるテーマ「古墳」に出会う。同年、百舌鳥古市古墳群(2019年世界遺産登録)の古墳ガイドブック『ザ・古墳群 百舌鳥と古市89基』(140B)、『都心から行ける日帰り古墳 関東1都6県の古墳と古墳群102』(ワニブックス)、『巨大古墳の古代史』(共著・宝島社新書)、『中公ムック 日本百名墳』(中央公論新社)などを取材・執筆。古墳や古代遺跡をテーマに、各地の古墳の取材活動を続ける。その縁で、添乗員の資格を取得。古墳オタクとして、オン・オフともに全国の古墳や遺跡を巡っている。日本旅のペンクラブ会員。

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