連載

2022/01/29

広島電鉄の超低床式電車に乗ってミニトリップ

路面電車に乗って約2時間の広島市内見物

野田 隆

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広島駅電停の乗り場案内
昨年末、広島滞在中に少しだけ時間があったのでJR広島駅前から広島電鉄(通称「広電」)の路面電車に乗ってみることにした。以前、宮島口まで2号線に乗り通し、フェリーに乗り換えて厳島神社を訪問したことがあったので、今回は広島港まで往復してみた。このルートには1号線と5号線の2系統が走っていて、5号線の方が距離は短いけれど、1号線は市内の中心部を通るので、他から来た旅行者には街歩きのような感じもして都合がよさそうだ。大回りとはいっても広島駅から広島港までは50分足らずである。電車は10分に1本程度あるようなので、帰りは5号線を使えば2時間後には戻って来れそうだ。というわけで、さっそく広島駅電停に向かった。

乗車したのはグリーンムーバーLEX

グリーンムーバーLEX
ホームは何本もあるけれど、電停なので改札口はない。そのうちメインとなるホームが1号線、2号線および6号線の乗り場だった。まもなく1号線の広島港行きが、反対側の降車専用ホームからスイッチバックして入線してきた。1号線は5連接の白い超低床式グリーンムーバーmaxが主力なのだが、午後の閑散時で乗客が少ないせいか短い3連接車体のグリーンムーバーLEXだった。もっとも、私はLEXに乗るのは初めてだったので大歓迎である。中間の車体にある入口から乗り込む。バスに乗るときのように入り口わきにあるICカード用機器にJR東日本用のSuicaをタッチする。ICカードが全国各地で共通に使えるのはありがたい。
LEXの車内
ちょっと不思議なボックス席
中間車の車内はロングシートになっていたので、そこは避けて後部の車内に行ってみた。そちらはクロスシートのようだ。先頭車に行こうかとも思ったが、ワンマン運転の場合は乗り降りが頻繁なので落ち着かない。先頭車と後部車両は同じレイアウトになっていて、狭い車内でも多くの人が座れるように巧みにシートを配置していた。もっとも、進行方向を向いていて車窓がよく見えるのは、中ほどの座席しかない。それも窓側に細長いテーブルがあって、不動産会社や求人情報などの冊子を何部か置いたスタンドが鎮座していて、ちょっと鬱陶しい。しかし、そこが他の席よりはベターなので妥協して座ることにした。対面の2人席でちょっと窮屈だが、幸い向かいには誰も腰を下ろさなかった。

広電の車窓から

電車は広島駅電停を発車。猿猴橋(えんこうばし)町という知らないと読めないような電停に停まると、猿猴川を渡る。次の的場町(まとばちょう)電停で5号線と分れ、京橋川に架かる稲荷大橋を越えて市の中心部の繁華街に差しかかる。三越や福屋といったデパート、それに銀行が立ち並ぶ相生通りを銀山町(かなやまちょう)、胡町(えびすちょう)、八丁堀、立町(たてまち)とこまめに停車しながら、ゆっくりと西へ進む。
紙屋町交差点
旧日本銀行広島支店
紙屋町東電停を出ると、原爆ドーム前を経て宮島口へ向かう2号線と分れ、交差点を大きく左へ曲がって進路を南に変える。本通(ほんどおり)電停を過ぎてしばらくすると、左手に昭和初期に建てられたクラシカルな3階建てのビルが現れる。旧日本銀行広島支店で被爆したものの倒壊を免れた歴史的建造物だ。これは広島市の重要有形文化財に指定され、現在一般公開されている。日銀ということで堅牢に造られていたのであろう。
平和大通り
幅が100mもある平和大通りをゆっくりと渡り、中電前に停車する。私は名古屋出身なので、中電と言えば中部電力を思い出すが、ここ広島では中国電力のことだ。目の前に、その本社ビルがあって、電停の名前になっている。
市役所前を過ぎ、道路とともに南東に進路を変えると、日赤病院前を通り、広電本社前に停まる。
広電の千田車庫
電停手前に広電の千田車庫があり、その入り口に旧型車両が停まっていた。鉄道ファンらしき人がひとりカメラを向けていたから珍しい電車なのであろう。
京橋川を越える御幸橋
次の御幸橋電停を過ぎると、電停の由来になった御幸橋を渡る。橋の下を流れるのは京橋川であり、的場町電停を過ぎたところで渡って以来の再会だ。こちらは河口に近いので幅が広くなった。次の皆実町六丁目電停脇の交差点で、広島駅を発車してしばらくしてから分かれた5号線と再会し合流する。ここの交差点で大きく右折すると、宇品通りを南下していく。
広大附属学校前、県病院前の先は、宇品二丁目、宇品三丁目、そして五丁目まで、地元の人あるいは何か縁があって日常的に乗り降りする人以外には区別がつきそうにない電停名の連続である。気が付くと、車内は閑散としている。それぞれの電停では降りる一方で、新たに乗ってくる人はいない。

最後は専用軌道を走って広島港へ

クランク状に進む元宇品口~広島港、先行するのは元京都市電
海岸通電停を発車してしばらくすると、突き当りにある広島海上ビルを避けるように大きく右折する。ここからは道路上ではなく専用軌道である。ところどころで道路を横断するけれど、踏切はなく、交差点の信号に従って停車したり進行したりするのは路面電車ならではのやり方だ。元宇品口に停車すると、左に急カーブした後、今度は右に急カーブして終点の広島港に到着した。3連接の車内から降りたのは私1人だった。一番前の運転台脇のICカード用機器にタッチして電車を後にした。
大きな屋根で覆われた広島港電停
大きな天井に覆われた終着駅で、ヨーロッパのターミナル駅を彷彿とさせる。3つの線路があるけれど、面白いことにA、B、Cという標示板がある。1番線、2番線ではなくてA線からC線とでもいうので、案内板には「のりばA、比治山経由広島駅行き」のようになっていた。改札口はなく、大きな屋根は広島港宇品旅客ターミナルのビルと直接つながっている。まるで駅ビルのようでもあり、内部にはトイレや売店もある。ビルを通り抜けるようにして反対側のドアを出ると、そこは海。江田島や瀬戸内海を渡って四国の松山へ向かうフェリーや高速船乗り場があった。機会があれば、ここから四国へ向かってみたいと思った。
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WRITTEN BY

野田 隆

のだ・たかし
1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。
蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。

のだ・たかし
1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。
蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。

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