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2021/12/29

なぜ日本の神様はバラエティ豊かなのか?

エビス様、稲荷様、天神様etc. 人気の神様のプロフィールとご神徳

平藤 喜久子

取材・文/渋谷申博 イラスト/さとうただし

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日本には、8万社以上と実にコンビニエンスストアよりもたくさんの神社がある。そこに祀られる神様も「八百万(やおよろず)」と称されるほどバラエティ豊富。健康・出世・縁結びなどさまざまなご利益(ご神徳)に与れる人気の神様ついて解説する。

ご利益もバラエティ豊か! 日本の神様の分類を知ろう

八百万といわれる日本の神々には、それぞれのご由緒に根差したご利益(ご神徳)がある。神社を参拝する時には、お祀りされている神様にまつわるストーリーも知っておこう。

【神様の分類① 神話に登場する神様】

 ここでいう神話とは、『古事記』『日本書紀』(以下、記紀と略す)に収録されたものをいう。それらの神話は天皇の祖先神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)を中心としたもので、神道で最も重視される神々が登場する。また、これらの神々を祀る神社も、朝廷から重視されたところが多い。
 神話は天地の始めから語りだされ、宇宙の中心となる神や生命力を象徴する神などが登場した後、 伊邪那岐命(いざなぎのみこと)・伊邪那美命(いざなみのみこと)が生まれ、国土の生成が託される。
 伊邪那岐命・伊邪那美命は海中の塩で作ったオノゴロ島で結婚をし、日本の国土を形成する島々を生み、続いて神々も生んでいく。その中でも最も貴いとされるのが天照大御神・月読命(つくよみのみこと)・須佐之男命(すさのおのみこと)で三貴子と呼ばれる。
 天照大御神は三貴子の中でも長子的存在で、記紀神話の最高神である。暴れ者の須佐之男命に手を焼いて天の岩屋に隠れた話が有名。自らの孫で神武天皇の曾祖父である邇邇芸命(ににぎのみこと)に地上の統治を命じて「天降らせた(天孫降臨)」とされ、この時、稲作の普及も託したといわれる。
 須佐之男命は複雑な性格をもつ神だ。高天(たかま)の原(天にある神々の世界)を荒らす乱暴者の顔をもつ一方、ヤマタノオロチを退治して美女を救う英雄神の性格ももつ。また、若き日の大国主神に試練を与える地下世界(根の国)の王としても神話に登場する。

伊邪那岐命(いざなぎのみこと) 伊邪那美命(いざなみのみこと) 国土を生んだ夫婦神

神話で最初に登場する神ではないが、実質的な創造神。日本の国土のほか、天照大御神・須佐之男命など主要な神を生んでいる。火の神を生んで死んだ伊邪那美命を訪ねて伊邪那岐命が黄泉の国(地下の死者の世界)へ行く神話でも知られる。
ご神徳:延命長寿 夫婦和合 縁結びなど
お祀りする主な神社:多賀大社(滋賀県多賀町) 伊弉諾神宮(兵庫県淡路市) 筑波山神社(茨城県つくば市)など

天照大御神(あまてらすおおみかみ) 皇室の祖であり日本国民の総氏神

伊邪那岐命・伊邪那美命の子(誕生の仕方は記紀で異なる)で、三貴子の一柱。高天原の主宰神であり、神道の最高神。太陽を神格化したものとされ、天の岩屋神話は日食もしくは冬至を表すとされる。天皇家の祖先神であることから皇祖神とも呼ばれる。
ご神徳:国家安泰 子孫繁栄 開運招福など
お祀りする主な神社:伊勢神宮 内宮(三重県伊勢市) 東京大神宮(東京都千代田区)  熱田神宮(名古屋市熱田区)など

須佐之男命(すさのおのみこと) 勇猛果敢な英雄神

三貴子の一柱。生まれてからヒゲが胸に垂れる年ごろまで泣き続けたとされ、このため父の伊邪那岐命から追放されてしまう。高天原でも乱暴狼藉を行い天照大御神の天岩戸隠れを引き起こしたため追放され、出雲に下ってヤマタノオロチを退治し櫛名田比売(くしなだひめ)を助ける。
ご神徳:ご神徳厄除開運 縁結び 夫婦和合など
お祀りする主な神社:八坂神社(京都市東山区) 津島神社(愛知県津島市) 氷川神社(さいたま市大宮区)など
 高天原に住む天つ神に対して、地上に住む神を国つ神という。この国つ神の王が大国主神である。少名毘古那神(すくなびこなのかみ)とともに地上を開拓して人々を豊かにしたとされ、『風土記(ふどき)』にもさまざまな神話が語られている。「因幡(いなば)の兎」の神話にもあるように医薬に通じていたとされ、温泉で病気を治した話も伝わっている。
 宗像(むなかた)三女神は天照大御神と須佐之男命が「うけい」という一種の占いをした時に生まれた神で、ユネスコの世界遺産に登録された宗像大社のご祭神。田心姫神(たごりひめのかみ)・湍津姫神(たぎつひめのかみ)・市杵島姫神(いちきしまのひめのかみ)(『古事記』では多紀理毘売命(たぎりひめのみこと)・多岐都比売命(あぎつひめのみこと)・市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)の三柱からなり、沖ノ島の沖津宮、大島の中津宮、宗像市田島の辺津宮に鎮座する。国家の守り神で、漁師や船乗り、遣唐使にも信仰された。
 大阪の住吉大社や各地の住吉神社で祀られている住吉神も航海の安全を守る神で、底筒之男命(そこつつのおのみこと)・中筒之男命(なかつうのおののみこと)・上筒之男命(うわつつのおのみこと)という三柱の神からなる。軍神として崇敬されるとともに、和歌の神様としても信仰されてきた。
 各地の浅間神社で祀られる木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやびめのみこと)は邇邇芸命の妃となった女神で、富士山の神ともいわれる。

大国主神(おおくにぬしのかみ) 国譲りを行った国つ神の王

国つ神の王で『出雲国風土記』などで語られる出雲神話の最高神。大国主神は称号の一つで、本来の名は大穴牟遅神(おおなむちのかみ 大己貴神)。ほかに八千矛神(やちほこのかみ)・葦原色許男神(あしはらしこおのかみ)・宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ)などの称号がある。後世、仏教の大黒天と習合し、大国様とも呼ばれた。
ご神徳:厄除開運 縁結び 夫婦和合など
お祀りする主な神社:出雲大社(島根県出雲市) 氣多大社(石川県羽咋市) 大國魂神社(東京都府中市)など

宗像(むなかた)三女神 国の安寧を守る美の女神

玄界灘に浮かぶ沖ノ島は古代の祭祀跡がそのままに残されていたことから海の正倉院とも呼ばれる。この島を神域とする宗像大社で祀られる神。大陸への要所を守る神として古くから朝廷の崇敬を受けてきた。水の神ともされ、後世、三女神のうちの市寸島姫神(いちきしまひめのかみ)は弁才天と同一視された。
ご神徳:国家安泰 交通安全 財運増大 芸道上達など
お祀りする主な神社:宗像大社(福岡県宗像市) 嚴島神社(広島県廿日市市) 江島神社(神奈川県藤沢市)など

【神様の分類② 元は人間だった神様】

『古事記』『日本書紀』の神話においては、神が人間と結婚することはあっても人が神となることはなかった。したがって、神と人とは厳然と区別されていたものと思われる。
 この関係に変化が起こるのは奈良時代。この頃より怨みをもって死んだ者の霊が祟りをなすと信じられるようになったのである。
 8世紀末~9世紀頃になると、こうした死霊への恐れは御霊信仰へと発展していった。怨霊の中には天皇の命や国の命運を危うくするものもあると考えられ、大規模な鎮魂の祭が行われるようになった。
 菅原道真公に対する信仰もこうした風潮の中から生まれたものであるが、他の御霊信仰とは異なる発展をみせた。一般的な御霊信仰では御霊の個性はしだいに薄れていくのに対し、天神信仰では道真公の霊であることが重視される一方、怨霊性は消え、学芸の神様とされるようになっていった。
 中世になると勇猛な武将を祀る風潮が生まれ、戦国時代になるとこれを政治的に利用するようにもなった。近世には柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)や蝉丸(せみまる)など文人・偉人も神として崇敬されるようになった。また、東照宮に倣って藩祖を祀る藩も現れた。

菅原道真公 御霊になった文官

845~903。宇多・醍醐天皇に仕えて政治に関与するとともに『類聚国史(るいじゅこくし)』などの著作を残したが、藤原時平らの讒言により太宰府に左遷され、その地に没した。その霊は天満天神となったとされ、冤罪を晴らし智慧を授ける神様として信仰されている。
ご神徳:学業成就 芸能・書道上達など
お祀りする主な神社:北野天満宮(京都市上京区) 太宰府天満宮(福岡県太宰府市) 防府天満宮(山口県防府市)など

徳川家康公 人神となった天下人

1542~1616。江戸幕府初代将軍。戦国の世を制して天下を統一した家康公は、その遺言により久能山に葬られた。これが東照宮のはじまり。翌年、遺体は日光に遷され、日光東照宮が創建された。このほか江戸城中や御三家の城下などにも東照宮が建てられた。
ご神徳:厄除開運 立身出世 健康長寿など
お祀りする主な神社:日光東照宮(栃木県日光市) 久能山東照宮(静岡市駿河区) 芝東照宮(東京都港区)など
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WRITTEN BY

平藤 喜久子

ひらふじ きくこ
國學院大學神道文化学部教授・日本文化研究所所長。
学習院大学大学院博士課程後期修了、博士(日本語日本文学)。専門は神話学。
著書に『神社ってどんなところ?』(筑摩書房)、『日本の神様 解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『神の文化史事典』(白水社・共著)などがある。

ひらふじ きくこ
國學院大學神道文化学部教授・日本文化研究所所長。
学習院大学大学院博士課程後期修了、博士(日本語日本文学)。専門は神話学。
著書に『神社ってどんなところ?』(筑摩書房)、『日本の神様 解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『神の文化史事典』(白水社・共著)などがある。

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