特集

2021/10/06

不調の引き金「血糖値スパイク」を防ぐ「抗血糖」の賢い食べ方

血糖値をコントロールすれば糖質もOK?

牧田 善二

取材・文/丸山佳子 イラスト/さとうただし

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現代人の多くは「糖質中毒… まずは糖質の悪性を知ろう!

 健康な人の血糖値は、空腹時で80〜90前後。ごく普通の食事(ごはんありの定食など)を取ったときは、1〜1時間半で100程度に上がり、2時間もすれば緩やかなカーブを描いて元に戻る。ところが、缶コーヒーや清涼飲料水などで大量に糖質を取ると、血糖値の急激な上昇と下降が起きる。
 それが、体調不良の元凶とされる「血糖値スパイク」だ。なぜこうした現象が起きるのか。糖尿病の専門医、AGE牧田クリニック院長の牧田善二さんはこう解説する。

「食べ物は胃で消化するのに時間がかかるため、インスリンの分泌によって血糖値の上昇が抑えられる。一方、液体は胃をすり抜けてすぐに小腸で吸収されるので、一気に血糖値が上昇してしまう。健康な人でも、缶コーヒーを1本飲めば、血糖値が140くらいまで上がります」

 血糖値が上がると、ドーパミンなどの脳内物質が分泌されてハイテンションになる。ゆえに、〝甘いものを取ると脳が働く、やる気になる〟という思い込みが生まれるのだという。

「しかし、しばらくして血糖値が急降下すると、今度はイライラや吐き気、眠気、集中力が続かないという不快な症状が出てきます。そこでまた、ハイになろうと糖質に手を伸ばす。これを繰り返しているうちに『糖質中毒』になり、気がついたら血圧がかなり高い、メタボになっている、糖尿病予備軍だというケースは非常に多いです」

 そうならないために重要なのが、食事術。「まずは糖質の悪性を正しく理解することが大切」と、牧田さん。

「糖質は、生命維持に不可欠な栄養素。日本人が大好きな白いごはんも、食べていいのです。ただし、少し控えめに。おにぎり、うどん、そば、ラーメンなど、単品で食べると糖質の取り過ぎになりますが、たんぱく質や脂質と組み合わせて食べれば大丈夫です。問題は、人工的に作られた、本来人間には必要のない悪い糖質を現代人が好んで摂取していること。その最たるものが、先程も話した缶コーヒーや清涼飲料水です。中毒性があるので、できれば止める。飲むなら水がいいのです」

 白い砂糖は人間が作り出した不自然なものの代表。甘さが欲しいときは、蜂蜜を。ビタミンやミネラル豊富な果物も、果糖に注意。ジュースにして飲むと一気に血糖値が上がるので、朝食でゆっくり食べるのがおすすめだ。
 また、血糖値コントロールに役立つ食材を意識して摂取することでも、糖質オフができるという。ぜひ参考に!
高血糖より危ないのは乱高下する血糖値スパイク
清涼飲料水を飲んで急上昇(スパイク)した血糖値を下げるため、体内では多量のインスリンが分泌され、今度は急降下する。低血糖になると不調を感じるため、また糖質が欲しくなる。そこで、短い時間に血糖値が乱高下。これが肥満、老化、病気の元凶となる。

血糖値は食習慣の見直しで簡単にコントロールできる

 肥満、老化、病気を招く諸悪の根源が血糖値ならば、健康長寿を手にするためには血糖値をコントロールしなければいけない。そう聞くと難しそうだが、「悪性の糖質を取らないようにして、食習慣を少し見直せば自由に食べていいので、誰でも簡単にできます」と牧田さんは語る。

「欧米人は日本人に比べて糖尿病がすくないのですが、それは主食という考え方がなく、ゆっくりと時間をかけて、野菜(サラダ)→ たんぱく質(メイン料理の肉や魚)→ 糖質(パン、デザート)の順に食べるから。血糖値を急上昇させないためには、ゆっくり食事をし、最初に消化を助ける食物繊維の多い食材を摂取して最後に糖質がいい。欧米のコース料理は理にかなっています。また、ワインを飲むことも、血糖値を上げない効果に直結します」

 日本ではあまり意識されてこなかったが、食べる順番は極めて重要。また、1日の食事の回数や摂取量のバランスも大切だという。

「たとえばイスラム教徒。彼らは、『ラマダン』の期間は日の出から日の入りまで一切食事をせずに神に祈りを捧げ、日没後、一気に食べる。しかもお酒を飲まず、甘いものが大好きなので、肥満と糖尿病がとても多いのです。空腹時にドカッと食べると血糖値もドンと上がるので、食事は腹七分目に抑え、小腹が空いたら我慢をせずにちょこちょこ食べるほうがいい。間食用にはナッツ類。ビタミン、ミネラル、たんぱく質が豊富な完全食品です。縄文人も食べていた自然な食品をしっかり噛んで食べることが、健康を作ります」

 ほかにも、消化を助けるために食後に運動をする、眠る4時間前までに食事は終わらせる、水をたくさん飲むなどは健康長寿に欠かせない。
 余分な糖質を取らないことに加え、体の糖化、老化の元凶となるAGE(前述)を増やさないことも大切だ。AGEは食品にも含まれており、唐揚げやトーストなど、こんがりとした焼き色がつくときに生まれる。調理法では、生→ 煮る→焼くの順にAGEが増え、特に高温で調理したときに増えることがわかっている。糖質が低い肉や魚でも、高AGEな食べ方は避けたいところ。魚なら刺身、肉は焼き肉よりしゃぶしゃぶがおすすめだ。

「いまは、自分で血糖値を測定できる機器もあるので、血糖値が気になる人は試してみるといいでしょう。何を食べたときに血糖値が上がるか、食べる順番で血糖値がどう変わるかが一目瞭然。実際の数値を2週間も見たら、食生活を変えようと思うはずですよ」

 一生治療が必要な病気になりたくないなら、いま、食生活を変えよう!

数字で覚える8つの食習慣

  1. 食べる順番は1に野菜、次にたんぱく質。主食は最後
  2. 糖質の摂取量は【朝3:昼5:夜2】のバランスで
  3. 水は1日2ℓ飲む
  4. 1日の食事回数は3~6食のちょこちょこ食べ
  5. 食事1回30分、ひと口30回咀嚼
  6. 食事の量は腹7分目
  7. ランチ後は15分以内に20分歩く
  8. 夕食は眠る4時間前まで
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WRITTEN BY

牧田 善二

まきた・ぜんじ
AGE牧田クリニック院長
医学博士、糖尿病専門医。北海道大学医学部講師、久留米大学医学部教授を経て、2003年より糖尿病をはじめとする生活習慣病治療のためのAGE牧田クリニックを東京・銀座に開設。延べ20万人の患者を診ている。糖尿病対策や糖質オフに関する著書多数。

まきた・ぜんじ
AGE牧田クリニック院長
医学博士、糖尿病専門医。北海道大学医学部講師、久留米大学医学部教授を経て、2003年より糖尿病をはじめとする生活習慣病治療のためのAGE牧田クリニックを東京・銀座に開設。延べ20万人の患者を診ている。糖尿病対策や糖質オフに関する著書多数。

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