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【口臭大国ニッポン】お口のニオイに自信はありますか?|怖くて臭い歯周病対策

世界的に口臭がキツイ日本…その理由は?

 当然ながら口臭は評判が悪い。職場で、家庭で…口がクサい人はどんどんとイメージが悪化してしまう。しかし、それは他人事ではない。在日外国人の72%が「日本人の口臭にがっかりした経験がある」と解答したデータ(オーラルプロテクトコンソーシアム調べ)もあるように、「口臭」は日本人にとって無視できない問題といえるだろう。
 臭いが発生する原因によって、口臭はいくつかに分類できる。ニンニクやタバコは言うに及ばず、朝起きた直後や空腹時などは健康な人でも息が臭いやすい。唾液の分泌が減るため、細菌の増殖とともに口臭の原因物質が増えてしまうためだ。
 そして、もう1つ。気をつけたいのが病的な口臭だ。
 病的口臭のほとんどは口の中に原因があり、その代表格が「歯周病」である。人が嫌がるような強い臭いはまず歯周病と考えていい。そこで今回は、歯周病の基礎知識と生活習慣の影響について少し学んでおこう。

 歯周病とはその名の通り、歯を周りで支える歯肉や歯槽骨などに炎症が起こっている病気のこと。歯周病と虫歯では原因菌がまったく異なる。虫歯菌は口の中でも比較的明るい場所に生息し、歯の表面を覆う硬いエナメル質にくっつく。放っておくと歯に穴が開いてしまう半面、日ごろの歯磨きで対応しやすい。
 一方、歯周病菌は空気を嫌い、暗い場所を好む。だから歯と歯肉(歯茎)の溝にできる歯周ポケットのように、掃除が難しい所に繁殖してしまうのだ。

全国の歯科医院に行った調査で、抜歯に至った原因のトップは虫歯(29.2%)や破折(17.8%)を抑えて歯周病(37.1%)だった。歯周病の恐ろしさを決して侮ってはならない。 引用元:出典:公益財団法人8020推進財団「永久歯の抜歯原因調査」(2018)

 歯周病が悪化しやすい習慣を1つ挙げておきたい。
それはずばり、喫煙だ。歯周組織は軟らかい歯肉の粘膜が守っており、そこには血液が通っている。タバコは血管を収縮させるため、歯周病菌の攻撃に血液の免疫成分が対抗するのを妨げてしまう。よって歯周病の悪化を止められないのだ。臨床をおこない、ほとんどの喫煙者が歯周病になっているといっても言い過ぎではないと感じた。

 歯周病が臭う理由は、歯周ポケットに繁殖した歯周病菌によって周りの組織などが分解されて腐敗し、硫化水素やメチルメルカプタンといった臭い物質(揮発性硫黄化合物)が発生するためだ。卵が腐ったような、あるいは生ごみみたいな悪臭といえば想像できるだろうか。残念ながら、この臭いはマスク1枚程度でどうにかできるものではない。また、個人差はあるものの、歯周病が進むほど口臭も悪化していく。

■口臭を予防、軽減する方法

 歯周病の進撃を食い止め、口臭の発生に待ったをかける方法は1つ。歯に付着した細菌の塊であるプラーク(歯垢)を小まめに取り除き、プラーク中に含まれる歯周病菌によって歯肉やさらに内側の歯周組織に炎症が起きないようにコントロールすることだ。
 口臭予防と聞くとマウススプレーやデンタルリンスなどを思い浮かべる人もいるだろう。しかし、一度付いたプラークはうがい程度では除去できない。臭いの一時的なマスキングや口をさっぱりさせたい時には便利だが、これだけで歯周病も安心などと思わないことだ

 誰にとっても身近な歯の掃除道具といえば歯ブラシだが、正しい歯磨きの仕方と同じぐらい推奨したいのが、デンタルフロスの日常的な使用だ。日本人がどれだけ勤勉に歯磨きをしても歯周病の悩みが消えないのは、歯の表面をごしごしするばかりで、プラークの温床となる隙間汚れをスルーしているから。フロスを使いこなせば、そんな非効率も解消できる。一見めんどくさそうでも、慣れたら簡単だ。
 なおフロスは歯ブラシよりも先に使いたい。上手な人はフロスだけで隙間汚れをほとんど除去できるので、仕上げにささっと歯ブラシで磨くぐらいでスッキリきれいになる。

 口の中を掃除するついでに、舌のチェックもしておこう。舌の表面には小さなでこぼこがあり、そこに汚れがたまると暗がりを好む歯周病菌が繁殖しやすいのだ。これを舌苔(ぜったい)といい、鏡で見るとその名の通り白い苔状のものが確認できる。実は舌苔も歯周病同様にクサいのだが、たまにガーゼなどでふき取っておけば大丈夫。歯ブラシでこすると舌を傷めてしまうので、専用のブラシかガーゼ、ウェットティッシュでやさしく汚れを落とそう。

 最後に、自分の口が臭うかどうか分からない、人に聞く勇気がなくて不安だという人にアドバイスを。大抵の大学病院や一部の歯科クリニックには精密な口臭測定機がある。口臭の有無だけでなく何に由来する臭いなのかも調べてくれるので、今後の対策に役立つだろう。
 いずれにせよ、歯周病を悪化させないためには、歯科での初期治療を急ぐことと、日ごろの入念なセルフケアの両立がカギとなる。歯周病との戦いに終わりがなくても、口臭は努力すれば必ず改善できる。周囲の反応に怯えることなく、自信を持って日々の活動に取り組むために、まずは自分の今の状態を見極め、対策への一歩を踏み出そう。

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照山 裕子

てるやま・ゆうこ 東京医科歯科大学 非常勤講師 日本大学歯学部卒、同大学院歯学研究科にて博士号取得。世界でも専門医が少ない「顎顔面補綴」を専攻し、複数の大学病院での臨床経験を基に、予防医学の重要性を執筆や講演などの場で発信している。主な著書に『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)、『「噛む力」が病気の9割を遠ざける』(宝島社)など。

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