湯治文化を守り、繋ぐ。2016年の熊本地震から蘇った青風荘.は日本でも数少ない湯治場のひとつだ。中でもすずめの湯はぴちぴちと足元から湯泉が湧く究極の湧き流し温泉で、湯治客から「奇跡の湯」と称されてきた。
現在好評発売中の一個人秋号では、「至福の温泉ベスト30」として全国の珠玉の温泉を大特集。熊本は南阿蘇村の五岳五湯のひとつとして青風荘の地獄温泉を紹介している。本記事では、紙幅の関係で本誌では書ききれなかった地獄温泉 青風荘の魅力を紹介する。
京都で修行した料理長が腕を振るう食事は絶品
京都で修行した料理長が腕を振るう食事処・山竈処(やまくど)での食事は絶品だ。取材陣が頂いたのは季節の鍋コースで、秋の鴨鍋を堪能。臭みの全くない京鴨は、料理長が特別な仕入れルートを持っているからこそ。食材ごとに合わせて調整されているという出汁が素材本来の良さだけを引き立てる。山盛りになった地場野菜とともに口へ運べば、優しくも滋味豊かなうま味が広がる。
添えられた自家製の柚子胡椒は芳醇な香りがその存在感を発揮。少し使うだけでひとたび鼻孔に豊かな柚子の香りが広がり、食材の味を引き出す。完熟したゆずの皮の中でも、 1 個から耳かき一杯分しか採れない貴重な部位を使用、しかも 2 年の時をかけて作る手間のかけようだ。帰りがけ、おみやげコーナーにあったので私は思わず6個も買ってしまった。
鍋だけでなく一品料理も豪華絢爛。鱒の刺身など、一見クセの強そうな食材に全く臭みがない。塩焼きに使われているヤマメは一週間前から餌を抜くことでえぐみが出ないようにしているそうだ。
夜食に塩むすびを提供してくれるサービスもうれしい。なにせ、米がうまい。
竈炊きの絶品白米と社長自らが作るフレンチトースト
朝食のために山竈処へ行くと、夕食の際にも気になっていたテーブルの木蓋が外されている。そこには炭火が敷き詰められた囲炉裏が。鮭や目玉焼き、ウインナーなどを自らの手でゆっくり焼いて食べる贅沢な時間だ。
そしてなんといっても、囲炉裏で焼いたおかずに合わせる白米が絶品だ。名水百選にも数えられる白川の名水は、地元の無農薬米を作る時にも炊く時にも美味しくする。そして竈で炊かれた白米は、最大限までそのポテンシャルが引き出される。
また、社長自らが作るフレンチトーストとスムージーも絶品必食。これを目当てに来るリピーターも居るのだとか。
身も心も癒やす3つの湯
地獄温泉の象徴でもある「すずめの湯」。足元から湧き、加水なしに一番新鮮な湯に浸かることができる究極のかけ流し湯は、湯治客から”奇跡の湯”とも称される。リウマチやアトピー、気管支系によいとされる青白くすべすべの湯。昔は裸混浴であったが、今では“着衣入浴”。ただ古きを守るのではなく、文化を守るためのアップデートが感じられる。
「元の湯」と「たまごの湯」は宿泊していれば男女入れ替えでどちらも楽しむことが出来る。引かれている温泉は2つとも同じで、殺菌効果が高く、水虫や湿疹など慢性の皮膚病によいとされる。そのため、”直しの湯” ”仕上げの湯”とも。
南阿蘇の雄大な自然の恵みたっぷりの絶品グルメ。そして、大地震から復興した”奇跡の宿”の”奇跡の湯”を是非堪能してほしい。
地獄温泉 青風荘.
熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽2327 ☎0967-67-0005
http://jigoku-onsen.co.jp/