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社会人大学院のすすめ~今だからこそ、充実した学びを得る

民間の銀行の後、ラジオ局の経理部長をしながら大学院に通学。そして念願の大学教授となった法政大学大学院の小方信幸教授。ESG投資の研究者であり、自らが学び直しを実践した教授が中高年のアカデミアでの学び直しを推す理由とは?

学生と会社員2足のわらじ

 小方教授は大学卒業後に住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、30歳代後半にモルガン銀行東京支店(JPモルガン)に転職した。2つの銀行で主に証券業務の知識と経験を得ることができた。40歳代に入ると、これまでの経験を活かして、大学教授か金融以外の企業で新たな挑戦をしたいと考えるようになった。

 そのようなとき、東京放送(TBSテレビ)に転職することができ、テレビとラジオの経理・財務業務を経験することができた。希望通りの経験ができたものの、50歳になると定年後の人生を考えるようになり、再び大学教授の夢が芽生えてきた。

「50歳の大台に乗ると、私に限らず、多くのサラリーマンは残りの会社人生と定年後の生き方を考えるようです。私の場合は、余り悩まず大学教授になる方法を探りました。結局、大学院で博士学位を取得するのが一番よいと考え、53歳で大学院に入学しました。残された時間を考え、また、少しでも可能性があるのなら今やらなければ、という気持ちから大学院入学を決断しました」

 小方教授は、ファイナンス分野で優れた業績のある教員が多い、青山学院大学大学院(MBAコース)に入学した。同大学院のもう一つの選択理由として、青山学院大学の立地の良さを上げている。職場と自宅から離れた大学院では通学で苦労すると言う。また、社会人が大学院に進学する際は、家族の理解と応援が不可欠であるとも言っている。小方教授は修士課程と博士後期課程の8年間、仕事と大学院の「二足の草鞋生活」を送ることになった。

「仕事と大学院の両立については、大学院受験を検討している社会人からもよく質問されます。勤務する企業の業種や職種によって事情は違うと思いますが、一般的に社会人はタイムマネジメントが上手ですので、意外と何とかなるものです。」

大学院で学ぶ意義仕事を学術的に見直す

 社会人が大学院で学ぶ意義について、小方教授はこう語る。

「私が所属する研究型の社会人大学院では、自分が携わってきた仕事を学術的視点で見直し、新たな発見により学術的にも実践的にも貢献できることが醍醐味であり、社会人大学院で学ぶ意義であると考えます。社会人大学院で学ぶことで、自分自身が成長し、社会に貢献できる可能性が高まります」

 また、社会人大学院では、学生同士がお互いに敬意をもって接することにより、年齢、性別、国籍などが異なる仲間との自由な議論を通じて、自分とは異なる考えを知ることができる。そのような、忖度のないフラットな関係性のなかで、思いもよらぬアイデアが生まれると言う。

「日本企業の場合、20歳代の新入社員が50歳代の経営幹部と対等に議論できる状況は、まずほとんどないと思います。また、多くの日本企業では、終身雇用と年功序列制度の名残があるためか、同調圧力が強く、同じ考えや行動を強要され、自由な意見を言えないのではないか、と想像します。同質的な組織では、イノベーションが生まれにくいと思います」

 このような構造から脱却できないことが、今の日本経済低迷の遠因になっているとも指摘している。

「私が日本の銀行に入って一番驚いたことは、役職の高い人が偉いという意識でした。今でも違和感があり、日本企業の悪いところだと考えます。サステナブルな経営を実践している欧米企業では、役職はあっても役割にすぎず、社員は役職に関係なくフラットな関係です。つまり個人を尊重する企業文化や価値観が明確にあります。このようなフラットな組織にしないと、イノベーションは生まれにくいと思います」

 50歳以降の人生を生涯現役でいきいきと生きるためにも、イノベーションを起こせる人材であり続けることは重要である。社会人大学院にはイノベーションを起こせる人材の育成も期待できるようだ。

「私の大学院時代の恩師は『勉強した者勝ち』だと常々仰っていました。社会人大学院の教員となった今、指導する大学院生の姿を見ていると、恩師の言葉の重みを感じます。社会人大学院では、同調圧力の強い組織を離れ、自由な発想で研究に取り組み、研究成果である論文を完成することにより自己実現もできます。そのような場として、私のゼミをお勧めします(笑)」

小方信幸 先生
1954年生まれ。法政大学大学院政策創造研究科教授。1977年慶應義塾大学経済学部卒、2010年青山学院大学大学院修士(MBA)、2015年青山学院大学大学院博士後期課程修了博士(経営管理、DBA)、住友銀行、モルガン銀行東京支店、東京放送(TBSテレビ)、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て現職。著書に『社会的責任投資の投資哲学とパフォーマンス ―ESG投資の本質を歴史からたどる―』小方信幸著(同文舘出版)

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