豊かな日本海の恵みを受け、加賀百万石の歴史と伝統が息づく石川県。中でも能美市は日本の伝統工芸である九谷焼が”生きた産業”として盛んだ。そんな能美市は街全体を通して、九谷焼のテーマパークの様相を呈している。
九谷焼オタクにとっての聖地とも言える能美市に行ったことはあるだろうか? 小松空港や、北陸新幹線が延伸予定の小松駅から近く、アクセスもよい能美市では、宿泊から体験、歴史まで、あらゆる九谷焼コンテンツを楽しめるのだ。
「ウェルネスハウスSARAI」は、能美市にある宿泊施設。健康と工芸をテーマに全面リニューアルされ、客室は九谷焼若手作家8名がプロデュースしている。改装された客室は現在7室あり、残りの1室も20 23年3月に完成予定。アートや文化、伝統を感じ取れるインテリアや内装が施され、世界でオンリーワンの客室だ。レストランでは、東京のミシュラン星付きレストランで働くスタッフが監修した創作料理が提供される。地元の農家と契約した有機野菜を使ったサラダなど、地元の食材を中心に使用した料理が豊富に揃う。料理は九谷焼の器で提供され、健康や美を意識した逸品となっている。
大浴場は、九谷焼の名工・福島武山氏、武腰潤氏によって彩られた大陶板が特徴。贅沢な空間で入浴中も九谷を堪能できる。温浴効果の高い薬用入浴剤を使用しており、超微細な気泡で肌の汚れを落とすシャワーヘッドも完備。日帰り入浴も可能だ。また、モダンな雰囲気のレストランは窓からの見晴らしもよく、開放感がある。能美らしい癒やしの自然に囲まれた和田山エリアに位置し、能美ふるさとミュージアムや国指定史跡能美古墳群へのアクセスも抜群。
九谷焼を全身で感じる旅において絶対にはずせないのが九谷陶芸村。技術の粋をあつめたモニュメントや、九谷焼の歴史や技術を学ぶことができる美術館、九谷焼が購入できるお店はもちろん、職人たちの作業場見学や九谷焼工芸体験もできる。
高さ12.9mを誇る巨大な九谷焼作品である「九谷焼ビッグモニュメント」は、日本藝術院会員の故武腰敏昭氏が手掛けた作品で、能美市内に国指定史跡能美古墳群があることから銅鐸をモチーフとしており、古代の森羅万象が表現されている。世界で唯一、「中に入れる九谷焼」として、2023年秋に内部を公開予定。浅蔵五十吉記念館は、九谷焼の大家であった故浅蔵五十吉氏の作品を中心に展示している美術館。浅蔵氏は文化勲章を受章した能美市出身の陶芸家で、九谷焼の伝統技法に基づいた作品を制作し高い支持を受ける。展示室には、浅蔵氏の作品を中心に、九谷焼の歴史や魅力について紹介。また、浅蔵氏と交流のあった池原義郎氏が設計した建物との調和が織り成す美の世界を堪能できる。五彩館では九谷焼を代表する作品や名品を展示。ジャパンクタニをはじめとする過去の名作や、九谷焼の制作工程や歴史について学ぶことができる。また、九谷五彩をイメージした色壁が特徴で、空間全体で観る者を楽しませてくれる。
体験館にある登り窯は九谷焼を作る伝統的な窯。一度に多くの陶磁器を焼くことができるのが特徴だ。伝統工芸の奥深さに触れることができる。九谷陶芸村内にある職人工房では、職人たちが制作に取り組んでいる様子を間近で見ることができる。自由に出入りできるエントランススペースから、作品制作の様子を見学することも。また、職人たちが手掛ける作品の展示も行われている。九谷陶芸村内には約10軒の九谷焼販売店があり、手頃な価格で九谷焼のお土産を購入可能。毎年5月には「九谷茶碗まつり」が開催され、お値打ち価格の九谷焼を求めて全国から多くの人が訪れます。
九谷焼をより深く知るなら、陶祖神社に訪れるのもいいだろう。九谷焼の祖である斎田道開を祀った神社だ。神社の建立は、道開が亡くなった1868年に始まり、1908年に現在の場所に再建された。九谷焼の佐野窯を開き、多くの陶人を育てた佐野地区に位置しているため、九谷焼とのゆかりは深い。また、狹野神社も見逃せない。佐野九谷茶碗まつり発祥の神社として、地域の人々から信仰を集める聖地的存在で、境内にある樹齢400年といわれるスダジイの御神木からはそのパワーを感じることができるだろう。狹野神社は素盞嗚尊命(すさのおのみこと)、天照大神(あまてらすおおみかみ)、豊受比咩命(とようけひめのみこと)を祀る神社だ。延喜式内社で、加賀藩主によって崇敬されていたとされる。境内には、周囲22メートルの椎の神木や神田山、お守山、雉の山の三山があり、共に神山と崇められている。また、境外の神苑は神楽山と称し、九谷焼の陶土の産地でもあったとされている。
ウェルネスハウスSARAI 住所:石川県能美市石子町ハ147-1 TEL:0761-57-1212 ホームページ:https://www.nomi-sarai.com/
狭野神社 住所:石川県能美市佐野町ノ88-2
陶祖神社 住所:石川県能美市佐野町オ54-1(狹野神社境内)