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滋味深い日本の”いいところ”を全身で感じるー嬉野温泉街でカラダが喜ぶ旅|一個人秋号web増刊号

 西九州新幹線の停車駅の一つである嬉野。シーボルトが泉質調査に訪れたとされる「シーボルトの湯」の存在をはじめ、日本三大美肌の湯である嬉野温泉を知っている人は多いだろう。しかし、嬉野の魅力はそれだけではない。広大な茶畑を有し、独自の文化を持つ嬉野茶。嬉野温泉湯どうふをはじめとした絶品グルメなど。好評発売中の『一個人』秋号では紹介しきれなかった嬉野の魅力をお届け!

雄大な茶畑と独自の発展を遂げた茶文化

 室町時代からの歴史をもつ嬉野茶。その独特な文化は今も脈々と受け継がれている。日本各地で農家の後継者不足問題などが叫ばれる昨今だが、こと嬉野の茶葉農家においてはその心配はないようだ。嬉野温泉観光協会の小野裕介さん曰く「30戸以上の若手茶農家が切磋琢磨しています」とのこと。 若手の茶農家育成が進んでいるのは、嬉野茶が業界において大きな存在である証左であろう。一面に青々と広がる茶畑には、今も生きる茶の生産地としての力強さがある。観光地からは離れた山あいにある茶畑に韓国から「この茶畑の景色を見るために嬉野へ旅行に来た」と言う観光客がいたのも印象深かった。また、最近では茶農家が自ら茶葉を直販するケースも増えてきているという。製茶屋によってブレンドされたものと違って、同一生産者による茶葉のみで作られる茶葉であるため、出来不出来含め、年によって味が大きく変わるそうだ。お気に入りの生産者さんの茶葉を毎年買って、その変化を愉しむのが”通”な楽しみ方らしい。

草野製茶園さんでお茶を試飲
一番の人気商品だという「新茶・八十八夜 さつき露」を頂いた。価格は1,000円(税抜)。

 無論、茶農家だけでなく、製茶職人もまた嬉野の地で腕をふるっている。製茶屋さんの魅力はなんといってもそれぞれのお店によるブレンドの違いだ。複数の茶農家から購入した茶葉を、趣向を凝らした配合や職人の技でブレンド。コストや味など、さまざまな側面を計算して独自の茶を作っている。嬉野茶は、日本茶で主流の「のび茶(ピンと伸びた茶葉)」ではなく「ぐり茶(くりんと曲がった茶葉)」であることも大きな特徴だ。この違いは仕上げの違いからきており、簡単に言えば「のび茶」は「精揉」と呼ばれる茶葉に熱を加えてお茶の葉の形を細く伸びた形にする工程が入っているが、「ぐり茶」はその工程がないことで茶葉本来がもつ旨味成分を損なわず、コクが出やすいのだという。「ぐり茶」は「のび茶」よりも生産量が少なくなるというデメリットもあるが、実際に茶を淹れてみれば違いはすぐに分かる。風味も香りも段違いだ。「嬉野の先人が効率より品質を追求した結果、嬉野茶はぐり茶なんです」と語るのは草野製茶園の専務の藤岡栄太郎さん。ご馳走になった「新茶・八十八夜 さつき露」は草野製茶園さんの人気商品。香りの高さはもちろんのこと、うま味をしっかりと感じる。いっそパンチのある味わいと言ってもいい。また、同じく人気の「新茶・露かぶせ」は日本茶アワード2018にてファインプロダクト賞を受賞している。こちらも頂いたが、より色合いも風味が強い印象。気づけば出張のお土産は決まっていた。

草野製茶園の専務・藤岡栄太郎さん

草野製茶園
〒843-0301
佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙2300−11
☎0954-42-0541
営業時間8:00-19:00
https://www-kusanoseicha-com.raku-uru.jp/

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