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ミドル脂臭も加齢臭も…中年からの不快臭に打ち克つ!|“ニオイ・クサイ”を改善する生活習慣ミドル脂臭も加齢臭も…中年からの不快臭に打ち克つ!|

自分の〝におい〟と向き合ってみよう

 加齢臭とは、1999年に化粧品大手の資生堂が命名した言葉だ。いわく「中高年に特有の脂臭くて、青臭いにおい」である。思い当たる人が多かったらしく、同社が20~50代のビジネスパーソンに行った「ニオイの実態調査」(2014)では、全体の7割以上が他人の加齢臭を感じた経験があると回答した。多くの人がそれとなく知っていたにおいを社会が承認して、いまや中高年についての常識として定着した感がある。
 それもそのはず、人が五感から得る情報の中で、本能を最も強く刺激し、なおかつ他人と共有しやすいのは〝におい〟なのだ。私たちは好ましいにおいをたくさん知っている。じっくりと蒸らした紅茶の華やかな香気とか、大切なあの人の甘い芳香とか──。けれども、心地良い香りや好みの香りがある一方で、不快に感じる嫌なにおいだって当然ある。加齢臭を含む強い体臭も、そんな世間では喜ばれないにおいの1つだ。

汗臭(思春期~20代)
若いほうが体温調節のためのエクリン汗腺からの発汗は多い。わきが体質だと、思春期からアポクリン汗腺の活動で独特のにおいが。

 体臭は、人の一生の中でずっと同じではない。個性や強弱があるだけでなく、年齢が上がるにつれて変化するのだ。迎えるピークは3つ。思春期から20代にかけての「汗臭」、40歳ごろをピークに30~50代前半に目立つ「ミドル脂臭」、そして40歳ごろを起点に増え始め、汗臭やミドル脂臭が次第に弱まっていくのと入れ替わるように、50代以降もピークが続く「加齢臭」だ。このうち中高年にとって気がかりな2つに注目すると、ミドル脂臭と加齢臭は、どちらも皮脂をより多く分泌する男性のほうが発生しやすい。脂臭い=オヤジ臭いとイメージされるゆえんだ。

ミドル脂臭(30代~50代)
皮脂の分泌がピークを迎える30代から、中年期に特有の脂臭いにおいを発するようになる。男性のほうが強烈。

 ミドル脂臭は、若者の汗臭とまったく違う、使い古した油のような強烈な臭気が特徴だ。その正体は、におい物質のジアセチル。頭部や首筋、体幹からの汗や皮脂が、皮膚の常在菌によって分解することで発生し、皮脂の中の中鎖脂肪酸と結び付いてにおいの原因となる。これが加齢臭になると、冒頭の「青臭い」を言い換えれば、少しカビ臭いような、ひなびた感じのにおいが脂臭に混ざってくる。胸や背中から分泌される皮脂中の脂肪酸が増えて酸化し、におい物質ノネナールが発生するためだ。
 このような皮脂の酸化は、偏った食事やストレス、生活リズムの乱れなどが引き起こしやすい。生活習慣に無理が重なると、皮脂の分泌が増えたり、活性酸素が発生してますます酸化が進んでしまうのだ。また、血液中に皮脂の原料となる中性脂肪が多いと動脈硬化
や脂質異常症などのリスクが高まるが、体臭の悪臭化を防ぐという観点からも中性脂肪の数値には注意したい。次のページからを参考に、生活習慣の改善へ1日も早く行動を開始しよう。

加齢臭(40代~)
青臭い、カビ臭いなどと表現され、中年後期の現実を突きつけられるにおい。男性に目立つが、女性にも発生する。

その先には…

 加齢臭が体臭の終着駅かというと、実はそうとも限らない。60歳を越えて高齢期に向かうと、汗に混ざったアンモニアのにおいが発生する場合がある。原因は腸内環境の悪化と肝機能の低下だ。腸内環境は年齢とともに悪化し、アンモニアを分泌する腸内細菌が増えやすくなる。これを肝臓が分解できているうちはいいのだが、肝臓の解毒力も低下してきて、処理しきれなくなったアンモニアが汗と一緒に排泄されるのだ。いってみれば、加齢臭の先の「老人臭」。回避したければ、今すぐにでも腸内環境の改善と、肝臓をいたわる生活への転換に取り組むしかない。ちなみに、老人臭とは言ったが、アンモニア臭をお年寄りだけのものと高をくくるのは間違いだ。若くても極度に疲労したり、お酒の飲み過ぎで肝臓を酷使するとアンモニア臭が混ざることがある。

 ミドル脂臭に加齢臭、老人臭と並べると、まるで体臭がまったくの悪であるかのように思われるかもしれないが、もちろんそんなことはない。心身ともに健康な人が発するにおいは、むしろ人を引き付ける力があるものだ。ミドル脂臭や加齢臭も、対面で気にならない程度にコントロールできていれば年齢相応のものと寛容に受け止められ、ひどく嫌われる心配はない。問題なのは、病的な不快臭である。もし今、あなたの体臭が悪臭に変わってしまっているとしたら、それは体の内側の変化のためなのだ。今からでも遅くはない。長いこと放置してきた生活習慣の乱れを正し、カラダ本来の働きを取り戻そう。
 なお、ご承知のとおり、女性も体臭と無縁ではない。脂臭くなりやすいのは男性のほう。しかし、女性も日々のストレスや生活習慣の乱れが重なると、自律神経やホルモンのバランスが崩れ、頭皮などの皮脂分泌が増えたり、酸化してにおいの元となる。また閉経を迎えると、女性ホルモンの激減によって男性ホルモン優位の状態──いわば〝オス化〟が起こるために、いつの間にかオヤジ臭を放っている恐れがあるので注意したい。

極意は〝生活習慣〟の中にあり

 中年からの不快臭の正体について学んだところで、いよいよここからは対策編だ。自分が発するにおいを良い状態に維持する、体臭マネジメントの極意を極めよう。最初に、下のチェックリストを試してみてほしい。自分が嫌なにおいの発生源になってしまうリスクの大きさや、改善すべきポイントを知ることができる。リストを眺めると、体臭の悪化を防ぐには第一に食事、それに運動や休息、ストレスコントロールへの意識が大切だと分かるだろう。

  1. 早食い、胃が悪い
  2. 糖尿病やメタボリックシンドロームがある
  3. 野菜や海藻、果物などの食物繊維が不足しがちだ
  4. 中性脂肪が高い
  5. 便秘をしやすい
  6. 汗をかく習慣がない
  7. 肉食が多い
  8. ストレスが多い、生活時間が乱れている
  9. アルコールをよく飲む、肝機能が悪い
  10. 慢性的に疲れている

参考文献:桐村里紗『日本人はなぜ臭いと言 われるのか──体臭と口臭の科学』(2018)

 運動の習慣がなくてすぐに始めるのはハードルが高いという人は、毎日の入浴から見直してみてはどうだろう。1日の汗やホコリと一緒ににおいを洗い流せるし、じっくり湯船に浸かって発汗を促し、全身に分布するエクリン汗腺が本来持つ機能を高めれば、においの原因となるベタベタ汗からほぼ無臭のサラサラ汗に転換させることも可能。おまけに温浴にはリラックス効果があるから、上がってから睡眠をしっかりとればストレスも解消できる。
 もちろん、運動もあきらめないでほしい。おすすめは有酸素運動だ。これを行うと細胞内に老化の一因である活性酸素が発生するが、それに負けまいと抗酸化力も向上するので、たっぷりいい汗をかきながら皮脂の酸化も抑えられる。ただしやり過ぎると活性酸素が勝ってしまうから、競技者でないならほどほどを心がけたい。
 食生活を変えるのは意外に簡単だ。あれこれ栄養素を気にするのも大事だが、やるべきことの基本はシンプル。つまり、なるべくいろいろな種類の食物を取る、である。肉ばかり、麺ばかりといった偏りを改め、野菜、海藻、豆、魚、果物と、普通に手に入るものを満遍なく食べるようにするのだ。それが腸内環境を改善し、ミドル脂臭や加齢臭を引き起こす中性脂肪の増加や皮脂の酸化を抑えたり、老人臭に直結するアンモニアの発生を止めることにもつながる。

バスタイムを上手に活用しよう
Point
○ミドル脂臭のにおい物質は頭頂部、後頭部に発生しやすい
○洗い過ぎは、かえって体臭を強くする
○入浴で汗をかいて汗腺にたまった垢や老廃物を取り除こう

 食生活を変えるのは意外に簡単だ。あれこれ栄養素を気にするのも大事だが、やるべきことの基本はシンプル。つまり、なるべくいろいろな種類の食物を取る、である。肉ばかり、麺ばかりといった偏りを改め、野菜、海藻、豆、魚、果物と、普通に手に入るものを満遍なく食べるようにするのだ。それが腸内環境を改善し、ミドル脂臭や加齢臭を引き起こす中性脂肪の増加や皮脂の酸化を抑えたり、老人臭に直結するアンモニアの発生を止めることにもつながる。

日本の伝統的な食事は腸活のお手本
Point
○一汁三菜が理想的
○スイーツの食べ過ぎには要注意!
○ビタミンE、B 群、C を恒常的に取るサプリも積極活用しよう!

 このように過剰な肉食を控え、植物や海産物を多く取り入れた食事が望ましいのは、腸内環境の仕組み自体がそうしたバラエティー豊かな食物を求めているからだ。腸の中、特に大腸には100兆個ものさまざまな腸内細菌が存在する。1人の人間が腸内に保持できる細菌の種類は幼稚園にいるころまでに決まってしまうが、それぞれ特徴がある腸内細菌は好むエサ(栄養素)もばらばらなので、腸の活性化を促すには食物の多様性が不可欠なのだ。
 中年からの不快臭への対策として、生活習慣の改善や、腸内環境を健全に保つことの必要性を述べてきた。とはいえ、無理に特別なルールを自分に課す必要はない。栄養バランスの良い食事も、運動も、ストレスをためないのも極めて普通の心がけである。むしろ至るところに過剰さやアンバランスがつきまとう現代の暮らしを見直して、本来あるべき〝普通〟に立ち返ることが何より肝心ではないだろうか。

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桐村 里紗

きりむら・りさ 内科医・認定産業医 tenrai株式会社代表取締役医師 2004年愛媛大学医学部医学科卒。幅広い臨床経験を経て、2019年からは生活者が自ら行動変容して病気を予防できるように「情報を処方する」活動に取り組む。主な著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか──体臭と口臭の科学』『腸と森の「土」を育てる──微生物が健康にする人と環境』(ともに光文社新書)など。

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