なぜこんな時刻表(ダイヤ)になったのか? 残念時刻表を読み解く超ニッチ企画第13弾!今回は特別編でバスを取り上げます。
※時刻表は記事最後に掲載
普段は、”各駅停車より鈍足な急行”といったような、残念な感じの列車を紹介するこの連載。今回は特別編として残念なバスを紹介したい。なぜなら、時刻表をあれこれ読み込んでいたら残念な列車並みのインパクトのあるバスを見つけてしまったからだ。
那覇の中心部にある「旭橋(あさひばし)」「県庁北口」といったバス停から、美ら海水族館方面へ向かうバス路線は4つある。
①3社(沖縄バス、琉球バス交通、那覇バス)共同運行の高速バス
②やんばる急行バスの高速バス
③沖縄エアポートシャトルの途中から下道を走る高速バス
④沖縄エアポートシャトルの那覇〜名護間ノンストップの高速特急バス
那覇市内から名護市内までの所要時間は、④が1時間10分程度、①と②が1時間30分程度、③は2時間10分程度となっている。今回紹介したいのは、①の路線で沖縄バスの車両で運行する「オリオンホテルモトブリゾート&スパ」16時55分発の「国際線旅客ターミナル前」行だ。
このバスは「記念公園前【美ら海水族館】」を経由し、「本部港(もとぶこう)」を17時11分に通る。その後、名護市内のバス停を経由して沖縄自動車道へ。那覇ICで高速を出て那覇市内を走り、那覇バスターミナルのある「旭橋」に19時18分、那覇空港の「国内線旅客ターミナルビル」に19時28分、終点の「国際線旅客ターミナル前」に19時30分に到着。所要時間は2時間35分だ。
①の路線の前後のバスの時刻を見ると、1本前のバスは所要時間2時間28分、1本後は2時間24分となっているので、那覇市内の夜の交通量増加による渋滞を考慮しての長めの時刻設定と思われる。この交通量増加で所要時間が長くなってしまったことで、非常に残念なバスとなってしまった。
先ほど書いた通り、このバスは本部港を17時11分に通る。そして本部港のフェリーの時刻表を見ると、1分前の17時10分に出港する「那覇港」行のフェリーがある。このフェリーは鹿児島新港を前の日の18時に出港。奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島の港を経由して16時40分に本部港に入港。17時10分に那覇港へ向けて出発する。そして那覇港には1時間50分後の19時に到着する。
那覇港のフェリー乗り場から旭橋までの所要時間をスマホアプリで検索すると徒歩13分と出てくる。つまり、高速バスの1分前に出港するフェリーに乗って港から歩いて旭橋へ向かえば、高速バス到着の5分前、19時13分に到着する。船と歩きで向かった方が高速バスより所要時間が短いのだ。
もちろん、船はバスのように時間ギリギリに港に到着して飛び乗ることはできないし、港に到着してもすぐに下船できるものではない。なので19時13分に旭橋にたどり着くというのは現実的ではない。だが、高速バスのダイヤが那覇市内の交通渋滞を考慮した結果、カーフェリーと大差ない所要時間となってしまっている感じが残念と言えるだろう。
船と鉄道やバスの所要時間を比較して、船が勝つパターンは、東京湾フェリーや伊勢湾フェリーなど湾内をショートカットするパターンが多いが、地図で本部港と那覇港の位置関係を見ると、ショートカットしている感じはない。しかもバスの方は50km以上高速道路を走る。バスの方が圧倒的に速そうに見えるのに船の方が速いとは……。
本部港から那覇の運賃はフェリーが2550円(3月1日現在、燃油サーチャージ込)、バスは2640円と船の方が早くて安いというのも残念な要素と言えるだろう。
ちなみに本部港を17時15分に通る③のバスがあるが、この便が旭橋に到着するのは19時48分。フェリーよりも30分以上時間がかかるためか、運賃は2000円と安く設定されている。

沖縄バス 系統117番 16時55分発 本部エリア発 那覇空港行

本記事は「一個人」2025年5月号に掲載した内容の増補版です。