目黒区の「蟠龍寺(ばんりゅうじ)」の境内にはおしろい地蔵さまが安置されている。こちらは大正12年(1923)の関東大震災で被災し、浅草から「蟠龍寺」に移ってこられた。江戸時代にはおしろいの鉛毒(昔のおしろいには鉛が含まれていた)に悩んだ歌舞伎役者が平癒を祈っておしろいを塗ったとされ、あばたで悩んだ娘さんが願掛けをしてきれいな顔になったともいう。
一説によると、おしろいを塗って祈願すると美人になれるという。なお、お地蔵さまの横に立てられた説明板には、こうも書かれている。
「いつの世も美しくありたいという願いは変わらないようですが、一番大切なことは、心を常に美しく養い保つことで、美しい心が美人をつくるということ、つまり心美人であるということではないでしょうか」
真言宗の総本山たる高野山の「奥之院」にもお化粧地蔵さまはおられる。
美しくなることを願って像を化粧する人が絶えないらしく、そのお顔は濃いめのメイクの時もあればナチュラルメイクの時もあり、千変万化している。
実はこの像、お地蔵さまではない。真言宗の開祖で高野山を開いた弘法大師空海さまの像だ。
お大師さまに化粧の趣味はなかったと思うが、慈悲深いお大師さまのことだから、苦笑しつつも女性たちの願いに耳を傾けておられることだろう。
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