読切

2022/02/02

節分はなぜ毎年2月3日になるのか

豆まきの風習は「年越し行事」だった

「一個人」編集部

文/竹内正浩(歴史探訪家)

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節分行事を大規模に開催したのは浅草寺が始まり。かつては祈祷札を堂内で撒く行事だったという。浅草寺の豆まきは、「観音さまの前には鬼はいないこと」にちなみ「鬼は外」とは言わず、「千秋万歳福は内」と発声するのがならわし。写真提供/浅草寺

旧暦では立春・節分は毎年大きく変動した

 新暦と旧暦の季節感が違う理由は、日本では明治維新に際して、宗教行事や祭礼などの伝統習俗についても新暦への切り替えが行われたからである。これは、韓国や中国などほかのアジア諸国が暦を新暦に切り替えた後も伝統行事を旧暦で行っているのと大きく異なる点だ。
 単純に旧暦の日付を新暦にそのまま読み替えたものもあれば、盂蘭盆会(いわゆるお盆)のように、「月遅れ」という概念を導入して、7月15日だったものを8月15日に替えて行う行事も出現した。お盆の行事は、新暦の7月15日に移行した東京や函館、金沢といった地域もあるにはあるが、大半は「月遅れのお盆」である。地域によって日にちが異なるとは、〝招かれるあの世の人々〟も大儀なことだ。
 旧暦7月7日の七夕もお盆と似ている。大半の地域が新暦の7月7日に移行したものの、仙台七夕など8月7日に行うところも少なくない。7月の行事をひと月遅らせたのは、新暦の7月が農繁期で忙しいためだともいわれるが定かではない。

 節分も季節感が変わった年中行事の一つである。ただし節分の場合、立春の前日という縛りがあるから、むしろ太陽暦である新暦との親和性が高かった。それというのも立春の定義が「太陽の黄経〔黄道座標の経度。春分点を0度とし、東回りに360度〕が315度のときをいう」で、太陽の運行に合わせた新暦ではほぼ2月4日に相当するからである。そのため節分が毎年2月3日にほぼ固定されているのは必然ともいえる。ところが太陰暦を基本とする旧暦の場合、立春というのは、毎年大きく変動した。立春が太陽の運行に合わせた日であることを考慮すれば、当然である。それゆえ立春の前日である節分も、年によって大きく動いた。

節分の寺社参詣が初詣のルーツ

 節分が前年末であることも珍しくなかった。たとえば直近の10年をみても、半分は前年末である。因みに2022年の節分(2月3日)は、旧暦でいえば1月3日となる。
「節分」はまだ「冬」だという判断もあったのだろうが、江戸時代の『東都歳事記』でも12月の部の中で節分は扱われている(旧暦の正月は「春」である)。
『東都歳事記』の節分の項は、以下のとおり。
「今夜尊卑の家にて煎豆を散(うち)、大戟鰯(ひいらぎいわし)の頭を戸外に挿す。豆をまく男を年をとこといふ。今夜の豆を貯へて、初雷の日、合家是を服してまじなひとする。又今夜いり豆を己が年の員(かず)に一ツ多く数へて是を服す。世俗今夜を年越といふ」
 初雷の日の習俗は消えてしまったが、それ以外は江戸時代と余り変わっていないところに驚きを禁じ得ない。文献によれば、すくなくとも室町時代には「鬼は外、福は内」と唱えていたそうである。

 この日、浅草寺では観音節分会が行われ、豆まきが行われた。また江戸の寺社では節分の守札を出すところが多かった。『東都歳事記』ではこの日、「諸神社参詣おほし」とある。現代の初詣の原点といえるものが、江戸時代の節分の参詣だったのかもしれない。因みに江戸時代、元日の初詣の習俗は存在しなかった。初詣は、寺社門前に鉄道を敷設した鉄道会社が客寄せに宣伝を始めたことで一般化した近代の新しい習俗である。
 節分を迎えたこの日、亀戸天神社では、追儺(ついな)が行われた。もともと宮中行事として始まった鬼やらいの行事で、今では節分と一体化している。

『東都歳事記』では、
「酉の刻、社前に燎(かがり)をたき、神楽を奏し、双角四目青赤の二鬼に出立てる者、猿の皮をかぶり鹿角の杖をつき社前に進出づ。巫(かんなぎ)出て問答し、幣杖にて鬼を打つ」
 現在でも亀戸天神社では、2月3日の酉の刻(日没)を迎えると、神官と鬼の問答が行われ、鬼が退散する行事が境内で古式ゆかしく行われている。
歌川豊国『初代豊国錦絵帖』より「十二組の内 七代目三舛の豆まき」国立国会図書館蔵/中央で皆の視線を浴びるのが七代目市川団十郎である。や羽織に描かれたは団十郎の定紋。七代目市川団十郎は、天保の改革のあおりを受けて江戸を追放されたことで知られる。
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