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19分後に出る普通電車で追いつけてしまう残念な列車~JR東日本常磐線・水戸線 高萩17時20分発 普通 小山行~「渡辺雅史の残念な鉄道時刻表」第1回

 なぜこんな時刻表(ダイヤ)になったのか? 残念時刻表を読み解く超ニッチ企画始動!
 ※時刻表は記事最後に掲載。


 10年前、出張の多い企業のオフィスには時刻表が常備されていた。ポケットサイズの時刻表を携帯する人や、鉄道の路線図を持ち歩く人は当たり前のようにいて、決して珍しい存在ではなかった。なので「最新号の時刻表に……」と話を切り出してもマニア相手にかぎらずともその言葉が伝わった。ところが、スマートフォンの普及が時刻表を取り巻く環境を大きく変えた。誰もが列車の乗り継ぎの際、乗換案内のアプリを使うのが一般的となり、オフィスから時刻表が消えた。そして、時刻表といえば駅に掲示してある表のことを指すようになり、冊子の時刻表の話をすると「時刻表って本になっているんですか?」と聞かれるようになっていった。書店でも10年前は入口の目立つところに平積みされていたものだが、現在は「趣味・ホビー」のコーナーに並べるところも増えた。

 私は毎月発売される時刻表を欠かさず購入し、長年読み込んでいる。25年前にJRの全路線に乗車、15年前には全国の鉄道路線全てに乗った。達成感から路線に積極的に乗ることはしなくなってもこの習慣だけは欠かせない。ある時、高崎線のページを見ていたら一度追い抜いた列車に追いつかれるという残念な列車を発見した。よく見ると、他にも残念な列車がたくさん走っていることに気がついた。以降、時刻表を見て列車に思いを馳せる以上に、こうした残念な列車を探すことがライフワークとなっていった。この連載は、時刻表好きの筆者が見つけた変な列車を紹介。なぜそんな列車が誕生したのかを推測したり実際に乗ってみたり、そしてあれこれと語るという、風変わりな鉄道企画だ。

 茨城県を南北に貫く常磐線。県北部にある高萩は特急「ひたち号」や「ときわ 号」が停車する主要駅だ。 この駅を始発とする17時20分発小山行は、高萩から日立、勝田、水戸と常磐線を南下。 水戸の先の友部から分岐する水戸線へ乗り入れ西に向きを変え、下館、結城を通り、栃木県の小山へと向かう列車。 小山に到着するのは20時07分となっている。
 時刻表に記されている「営業キロ」という距離の目安をみると、高萩と小山の距離は113.9キロな ので平均時速は40キロほど。常磐線、水戸線は普通列車でも時速100キロほどで走る。ここまで遅い理由は水戸と友部で長時間停車するからだ。
 高萩を出て18時06分に水戸に到着、いわきからやってくる特急ひたち24号に追い越されるため24分停車する。その後、18時30分に出発した列車は常磐線との分岐駅となる友部に18時47分に到着。ここで常磐線の反対方向の列車がやってくるのを待つため11分停車。土浦や石岡からの乗り換え客を乗せて18時58分に小山方面へと向かう。
 この列車が残念なのはただ長時間停車するからではない。なんと後から来る普通列車に抜かれてしまうのだ。
 勝田を18時00分に出発、次の駅の水戸に18時06分に到着し、18時30分に出発すると書いたが、この列車のあとに勝田を出発する普通列車品川行の時刻を見ると 18時08分となっている。その品川行列車が水戸に到着するは18時14分で、出発は18時15分。高萩発小山行の残念な列車は、水戸で後続の普通列車に追い越される。

 勝田到着直前にアナウンスが流れるのなら 「この列車途中の水戸で後から出発する普通品川行に追い越されます。友部までお越しの方はこの後出発する普通列車にご乗車ください」となる。
 さらに水戸を残念な列車の8分後に出発する普通品川行は、友部で追いつき残念な列車が友部を出る6分前の16時52分に友部を出て抜いていく。加えて、残念な列車が高萩を出た19分後の17時39分に高萩を発車する水戸行きの普通列車がこの列車に接続している。つまり、同じ駅19分後に出る普通列車に乗っても追いつけてしまうのだ。

 この列車が運行されているのは、帰宅ラッシュの時間帯。常磐線の高萩~水戸間は日立製作所の工場を抱える日立市、県内で4番目に人口の多いひたちなか市、県庁のある水戸市が並ぶ関係で列車の本数が多い。この区間で水戸で24分も停車させた上、友部で11分も停車させれば後続の列車にどうしても追いつかれてしまう。だが、本数の少ない小山行きと特急ひたち24号と接続を図ることで、いわき方面から水戸線沿線へ向かう人の利便性が増す。友部での11分停車も土浦方面からの利便性を考慮したものだろう。学校の部活終わりの時間帯というのも利便性優先させた理由の一つかもしれない。JRがダイヤ改正をする際「ご利用状況に合わせて」という文言が使われる。私はその「ご利用状況」を想像し、このように推測することが大好きだ。次回もまた、読んでいただけたら。

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渡辺雅史

時刻表好きが嵩じ「時刻表探検家」を名乗るフリーライター。自宅に所蔵する時刻表は国内、海外のものを合わせて500冊以上。雑誌や書籍への執筆のほか、ラジオ番組の構成作家なども行う。著書に「銀座線の90年(河出書房新社)」「東京駅コンシェルジュの365日 業務日誌に見る乗客模様(交通新聞社新書)」など。

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