「火の見」という名字は役人の勘違いから生まれた
12月になると木枯らしも吹き、寒さが一段と厳しくなる。空気も乾燥するため、この時期から春にかけて怖いのが火災である。正に「火の用心」に心がけなければならない。最近は立派な消防署ができ、「火の見櫓(ひのみやぐら)」は見ることが少なくなってしまった。
昔は火災を早期に発見するために、各地に「火の見櫓」が設置されていた。火災が発生した際に鐘やサイレンでいち早く住民に知らせるためである。その「火の見(ひのみ)」という名字がある。
名字の由来は、火の見櫓に関係してではなく、役人の間違えから生まれたものである。
明治の始め、国民は皆名字を届けることとなったが、「火の見」家でも役所に行き先祖から伝わる「人見(ひとみ)」ですと言ったそうである。しかし、後日戸籍を確認すると「火の見」になっていたそうである。つまり、役人が「人見(ひとみ)」を「ひのみ」と聞き間違えたことが原因である。
「火の見」家の前には「火の見櫓」が設置されていて、地名(小字名)も「火の見」であった。地名が名字になることも多かったことから役所の人も地名を名字にしたのだろうと勘違いしたと考えられる。全国には、同じように役所の人の聞き間違えや書き間違えで名字が変わってしまったという事例もある。
ところで、火に関する名字では火口(ひぐち)・火縄(ひなわ)・火箱(ひばこ)・火置(ひおき)・火切(ひきり)・火脚(ひあし)・火消(ひけし)・火野宮(ひのみや)・火ノ川(ひのかわ)・火口内(ひぐちうち)などがあり、火消さんは消防士にピッタリの名字である。