スポーツ「以外」のオリンピック種目があった
オリンピックでは、陸上競技や球技、格闘技など、さまざまな競技が行なわれる。共通しているのは、いずれも体を動かす「スポーツ」であることだ。こんなことはわざわざ言わなくても、わかっていることだろう。
しかし、近代ではスポーツ以外の種目も実施していた。それは「芸術競技」である。1912年にスウェーデンのストックホルムで行なわれた第5回大会から始まり、第14回大会(1948年・ロンドン)まで開催されていたのだ。
部門は、絵画や彫刻、文学、音楽、建築など多岐にわたる。それぞれスポーツをテーマに作品を発表。採点によって順位が決まり、オリンピック種目だから当然、1~3位にはメダルを授与する。しかし、「該当者なし」ということもあるのが、ほかの競技とは大きく異なる。
日本人では、「赤とんぼ」の作曲家として知られる山田耕作が、ベルリン大会(1936年)音楽部門の選手だった。しかし、世界の壁は高く選外に終わってしまった。同大会では絵画の藤田隆治とデッサンの鈴木朱雀が銅メダルを獲得している。
「芸術競技」が誕生した理由
それにしても、なぜオリンピックに芸術競技があるのか。それは、近代オリンピックの礎を築いたとされるフランスのピエール・ド・クーベルタンによる。スポーツで鍛えられた肉体は美しく、芸術作品も美しい。どちらも美をたたえ、さらに神を表現するものであると考えられ、競技として採用することを提案したという。
しかし、芸術の良し悪しは主観に左右されがちで、誰もが納得できるような採点ができなかった。そのため、不満の声が寄せられるようになり、1948年のロンドン大会を最後に、オリンピックの舞台から姿を消した。
現在は廃止されてしまった芸術競技だが、じつはオリンピック開催国では「芸術展示」というものを行なっている。コンサートやアート展などを開催しており、完全にスポーツと芸術の縁が切れたわけではない。