岐阜県の観光地と言えば、世界遺産白川郷や飛騨高山などが有名だが、今回は知る人ぞ知るとっておきのスポットをご紹介しよう。日本三大山城のひとつ、岩村城跡の眼下に歴史的な城下町を残す恵那市岩村町。そして、200を超える滝と全国でも珍しい高濃度炭酸泉を誇る下呂市小坂町(おさかちょう)だ。歴史と自然、食文化が豊かな両地域は、NEXT GIFU HERITAGE ~岐阜未来遺産~に認定されている今注目のエリアである。
ご一緒してくださるのは俳優の佐々木蔵之介さん。「ドラマのロケなどで各地に旅することは多いけれど、岐阜県は、以前大河ドラマで豊臣秀吉を演じた際に少し足を踏み入れただけ。ほぼ未知の県だからこそ、発見も多いんじゃないかな」と興味津々だ。ここでは、「飛騨小坂~自然のめぐみを体験、滝めぐり、湯めぐり~」をご紹介する。
NEXT GIFU HERITAGE 〜岐阜未来遺産〜 とは?
地域の自然環境や伝統文化などを守りながら、観光客の満足度だけでなく、そこに暮らす人々の生活も豊かにする持続可能な観光(サステイナブル・ツーリズム)が、世界の観光のスタンダードとなるなか、岐阜県では、サステイナブル・ツーリズムの先進的取組みであり、世界から選ばれる旅先になり得る地域・観光プログラムを「NEXT GIFU HERITAGE ~岐阜未来遺産~」として認定。現在、飛騨小坂と恵那岩村を認定している。
特設サイト:https://www.kankou-gifu.jp/article/detail_205.html
太古の大噴火で生まれたワンダーランドを歩く「小坂の滝めぐり」
下呂市小坂町にやってきた。この地方の最高峰である御嶽山(おんたけさん)では、54000年前に大規模な噴火があった。ここ飛騨小坂には、その大噴火が作り上げた驚異的な自然景観がある。まずは巌立(がんだて)と呼ばれる巨大な岩壁。高さ72m、幅120m。御嶽山から流れ出した溶岩流が冷えて固まったものだ。
ここから渓谷沿いの遊歩道を10分ほど歩き、美しい滝が3段になった三ッ滝に到着。さらに進むと、からたに滝、あかがねとよと次々に滝が現れる。飛騨小坂地区には、5m以上落差のある滝が200以上もあり、初心者から楽しめる滝めぐりコースが多数整備されている。NPO法人「飛騨小坂200滝」のガイドと一緒なら、より秘境にある滝を探すトレッキングなどにも挑戦できる。夏のシャワークライミング、冬の氷瀑めぐりと季節ごとのイベントもおすすめだ。佐々木さんも滝を眺めながら深呼吸。「マイナスイオンがたっぷりで心身が癒されますね。この滝なら、いつまでも見ていられそうです」
巌立を模したナスは「郷土食ひのきや」だけの逸品
ランチは「郷土食ひのきや」で、地元で採れた川魚や野菜を使った料理を賞味。独特のたれにつけた鶏肉を豪快に焼くけいちゃんは、飛騨小坂、下呂などを発祥とする人気の郷土料理だ。
大きな米ナスを焼いて味噌を乗せた料理は、先ほど訪ねた巌立の大岩壁に見立てたここオリジナルの巌立焼。ごはんは希望すれば、「龍の瞳」という地元産の米に変更できる。数々のコンテストで優勝した日本でも最高級のブランド米である。
入って、食べて、飲む。「湯屋温泉」の炭酸泉
飛騨小坂には、湯屋(ゆや)、下島(したじま)、濁河(にごりご)と3つの温泉がある。宿泊する湯屋温泉は、400年前から湯治場として栄え、全国でも珍しい高濃度炭酸泉が湧いている。
泉岳舘(せんがくかん)にチェックインし、まず周辺を散歩してみた。真向いにある冨士神社でお参りし、飲泉場に足を伸ばす。炭酸だけでなく鉄分も多く含まれ、湯は赤茶けていて強い風味がある。
宿に戻っていざお風呂。浴室の前にも飲泉場があったので、また飲んでみる。先ほどの飲泉場と違い無色で、味は甘味のないサイダーのようだ。湯屋温泉では宿ごとに源泉があり、それぞれ味や温度が違うとのこと。泉岳舘では36度と40度の2つの浴槽がある。炭酸泉の性質上、ぬるい方が炭酸の発泡感が強く、肌にぴちぴち当たる感じが心地よい。
そしていよいよお楽しみの食事だ。山の幸をふんだんに使った美しい料理たちに目を奪われる。丸い籠にぎっしり並ぶ季節の盛り合わせは大きなナツメやきぬかつぎなど、他ではなかなか味わえないものばかり。いわなの刺身も、山間の里まで来ないとまず食べられないだろう。そして極めつけは、飛騨牛の源泉しゃぶしゃぶだ。泉岳舘の源泉はそれほど味がきつくないので料理にも使えるし、ウイスキーを割って飲むのも良い。
翌朝、佐々木さんにお宿の感想をうかがってみた。「炭酸泉を2か所で飲んでみて、あれほど違いがあるのに驚きました。朝食に出た炭酸泉のおかゆも美味しくておかわりしたほどです」。まだ知らない岐阜との出会いになったようだ。
湯めぐりにおすすめ「下呂温泉」
飛騨小坂から車で30分程度の下呂温泉に足を伸ばし、泉質の違いを楽しむのも一興。84度という高温度の温泉が湧出している。アルカリ性単純泉で無色透明のまろやかな湯が肌によく絡む。温泉街の中央を流れる飛騨川沿いにはしだれ桜が連なり、毎年4月には見事に花をつける。
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国際指標を取り入れた持続可能な観光プログラム「NEXT GIFU HERITAGE 〜岐阜未来遺産〜」について
岐阜県ではこれまで、地域が誇る自然や歴史、文化等の資源を掘り起こし、全国に通用する観光資源として磨き上げる 「岐阜の宝もの」認定プロジェクトに取り組んできた。 持続可能な観光(サステイナブル・ツーリズム)が世界の潮流となる昨今、「岐阜の宝もの」の認定基準にサステイナブル・ツーリズムの国際指標を取り入れ、持続可能な観光の先進的取り組みであり、世界から選ばれる旅先となることが期待できる地域・観光プログラムを「NEXT GIFU HERITAGE 〜岐阜未来遺産〜」として認定する新制度を、 2022年6月にスタートした。
認定の条件
① 社会・環境・経済面で持続可能であること
② 国内外からの誘客が期待できること
③ 国際的な評価の獲得を目指すものであること
資源を守り、つなぐ、地域の手
希少な炭酸泉を楽しむ 「湯めぐり」
日本では希少な高濃度天然炭酸泉や、標高1,800mの秘湯も地域で大切に守られている。日本三大名泉に数えられる下呂温泉との湯めぐりも良い。
バラエティ豊かな「小坂の滝めぐり」
200を超える豊富な滝を活かすため、さまざまな滝めぐりコースが設定されている。夏はシャワークライミング、冬は氷瀑めぐりといったユニークな体験が可能。滝めぐりのガイドサービスを提供する地元のNPO法人が中心となり、自然保護活動や地元中学生による英語ガイドの育成なども展開。
佐々木蔵之介◉ささきくらのすけ
1968年2月4日生まれ。京都府出身。神戸大学農学部卒業。岐阜も舞台となった2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」では豊臣秀吉役を演じた。近作はドラマ「マイホームヒーロー」(2023年)、映画「ゴジラ-1.0」(2023年)など。
取材協力◉岐阜県 取材・文◉吉田さらさ 撮影◉平山訓生 ヘアメイク◉西岡達也(ラインヴァント) スタイリング◉勝見宜人(Koa Hole inc.) 地図製作◉ジェオ