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本殿の裏に奥宮と「奥の奥宮」があった|奥宮巡礼② 武蔵御嶽神社(東京都)

奥宮。そこは「はじまりの場所」であり、魂の根源である。
本社より奥に位置する神様がおわす領域。
原点回帰と再生のための神社参詣に出かけてみよう。

修験の道を追体験し至る最奥の神域

 多摩川の渓谷をさかのぼり、標高929mの武州御嶽山の頂に鎮座する武蔵御嶽神社に詣でるのは、それだけで非日常の体験である。

 ケーブルカーを降りて建ち並ぶ「天空の御師(おし)集落(宿坊群)」を抜け、天に通じるようなお社に迎えられる感覚は格別である。そして、うしろを振り返ると関東平野の大景観。この神社が「関八州総守護社」と呼ばれるのも納得できる。

標高929mの武州御嶽山の頂に祀られる武蔵御嶽神社の拝殿。奥ノ院峯の山頂近くに祀られた奥宮(男具那社)。男具那(おぐな)とは、日本武尊の別名。

 しかし、「大切なものは奥にある」(須崎宮司)。本殿裏の一画に「奥宮遥拝所」があり、額縁の真ん中に見事な三角錐の山容があらわれるのだ。

 奥ノ院峰という。由緒伝説によれば、日本武尊(やまとたけるのみこと)が「東国平定を成就してこの山に帰り、身に着けた甲冑を脱いで岩倉に納めたとされ、それが「武蔵」の国名の由来(日本武尊の武具を蔵する山)であるともいう。

 その山上に祀られる奥宮( 男具那社、おぐなしゃ)への参詣は、まさに「はじまりの場所」へと至る登拝行だ。途中、鎖伝いに進むポイントもあり、修験の霊場だった往時を追体験できる。

 何と、奥宮の裏からつづく山頂部にもうひとつのお宮があった。奥宮の奥に「奥の奥宮」ありとも見える。「日本武尊の四方を展望あらせらりし遺蹟」とも言われたという。

奥宮の背後を登ると、岩盤を木の根が覆う山頂に至り、石祠(奥の奥宮)が祀られている。
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本田 不二雄

ほんだ・ふじお 1963年熊本県生まれ。 ノンフィクションライター、編集者。 おもに一般向け宗教書シリーズの編集制作・執筆に長く携わる。 著書に、『ミステリーな仏像』『神木探偵』『異界神社』(駒草出版)、『噂の神社めぐり』(学研プラス)、『今を生きるための密教』(天夢人)、『神社ご利益大全』(KADOKAWA)、『弘法大師空海読本』(原書房)などがある。

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