奥宮。そこは「はじまりの場所」であり、魂の根源である。
本社より奥に位置する神様がおわす領域。
原点回帰と再生のための神社参詣に出かけてみよう。
修験の道を追体験し至る最奥の神域
多摩川の渓谷をさかのぼり、標高929mの武州御嶽山の頂に鎮座する武蔵御嶽神社に詣でるのは、それだけで非日常の体験である。
ケーブルカーを降りて建ち並ぶ「天空の御師(おし)集落(宿坊群)」を抜け、天に通じるようなお社に迎えられる感覚は格別である。そして、うしろを振り返ると関東平野の大景観。この神社が「関八州総守護社」と呼ばれるのも納得できる。
しかし、「大切なものは奥にある」(須崎宮司)。本殿裏の一画に「奥宮遥拝所」があり、額縁の真ん中に見事な三角錐の山容があらわれるのだ。
奥ノ院峰という。由緒伝説によれば、日本武尊(やまとたけるのみこと)が「東国平定を成就してこの山に帰り、身に着けた甲冑を脱いで岩倉に納めたとされ、それが「武蔵」の国名の由来(日本武尊の武具を蔵する山)であるともいう。
その山上に祀られる奥宮( 男具那社、おぐなしゃ)への参詣は、まさに「はじまりの場所」へと至る登拝行だ。途中、鎖伝いに進むポイントもあり、修験の霊場だった往時を追体験できる。
何と、奥宮の裏からつづく山頂部にもうひとつのお宮があった。奥宮の奥に「奥の奥宮」ありとも見える。「日本武尊の四方を展望あらせらりし遺蹟」とも言われたという。