奥宮。そこは「はじまりの場所」であり、魂の根源である。
本社より奥に位置する神様がおわす領域。
原点回帰と再生のための神社参詣に出かけてみよう。
巨樹・老木がそそり立つ神さびた神域
イザナギ命とともに国土を生み、森羅万象の神々を生んだイザナミ命。その御霊が眠る地は、いわば母なる魂の原郷といえるだろう。それはどこか。『古事記』には、イザナミ命は「出雲(島根)と伯伎(鳥取)との境の比婆山(ひばやま)に葬られた」と書かれている。「比婆山」の比定地はいくつもあるが、その白眉は、広島県庄原市に位置する比婆山(標高1264m)とその東南麓に鎮座する熊野神社だろう。
境内に足を踏み入れると、圧巻の光景と出会う。参道の両脇に尋常ではないスギの巨木がそびえ、本殿奥からつづく参道には神さびた景観がそっくり残っているのだ。社伝には、創祀は和銅6年(713)にさかのぼるという。
本殿(一宮)の奥に進むと、二宮手前に巨大なイワクラが鎮座していた。「神の蔵」といい、古くはここでイザナミ命を祀る祭祀が行われたという。
境内はさらに三宮から「那智の滝」へとつづき、さらに比婆山山頂へとつづく。一般の参詣者は、ここでいったん引き返し、山頂近くの立烏帽子山駐車場までクルマで向かおう。
そこから先は、まさに異界を彷彿させる山行。ブナ林を抜けると、老樹に囲まれて鎮座する巨石があらわれる。そこが、イザナミ命の御陵なのだ。