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2万人調べてわかった! 理想的なウンチの作り方|ちょい出し『一個人』秋号

 好評発売中の一個人秋号の記事をちょい出し!
 すべての道はローマに続くように心も身体も病気も元をたどれば腸から生まれるのかもしれない。なぜなら動物の最初に生まれる臓器は脳でも心臓でもなく腸だから。消化管である腸内にはたくさんの細菌が生息し。その数は500種類以上、40兆個以上ともいわれ、健康寿命を左右する腸内フローラを形成している。ここ数十年間に腸内フローラの研究は、世界中で一気に進み、いまや、老化、糖尿病、免めん疫えき、肥満、うつ、認知症、アレルギー、がんからヒトの精神、人格にまで関連していることがわかってきた。しかし、この健康に良い影響を及ぼす「個性的」な腸内フローラは60歳頃に優位だった善玉菌が衰え、悪玉菌が増え始める。あんなに健康だった人がなぜ、亡くなったのか!こうした驚きも経験ある50歳台以上の読者に残りの人生を健康で暮らす土台、腸内フローラを上手に育て、長寿を阻はばむ腸内細菌「60歳の壁」を乗り越える新常識と最小限だが、毎日「続けられる」実践法をお送りします。

最新研究で分かった健康寿命と長寿菌の関係

 「あなたのウンチを私にください!」と2万人から採取し、21世紀は腸の時代と呼び、約50年にわたり大腸内の腸内細菌が及ぼす影響を研究している「ウンチ博士」こと辨野義己(べんのよしみ)先生は、腸はファースト・ブレイン(第一の脳)であり、腸内細菌のあり方を知らせるウンチは人格だとも喝破し、三つのウンチ力--①つくる力②育てる力③出す力の必要性を説く。
 そしてはじめに、自分の腸年齢を知ることからの腸活を勧める。「まず、77ページ上にある『あなたの腸年齢をチェック』してみましょう。結果が悪くても悲嘆してはなりません。腸内環境は、肉中心から野菜中心の食生活を変え、運動することで着実に健康的な状態にできるのです」と確信を持って語る。
 また最新研究をもとに健康寿命と長寿菌について解説してくれた。「これまで健康な腸内環境はビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が指標とされてきましたが、最新の遺伝子技術による解析で未解明だった腸内細菌の中で酪酸産生菌(以下、「酪酸菌」)のよい働きが解明できたのです」辨野先生は、日本の健康長寿地域の長寿者のウンチを調べてみると、この酪酸菌が数多く住んでいることを発見した。
 「酪酸菌は野菜などの食物繊維から短鎖脂肪酸のひとつである酪酸という物質を作り、酪酸はがん細胞の抑制や腸粘膜の免疫向上、腸管機能アップなど効果をもたらす物質です。結果、これが健康長寿のカギだということが分かりました。そこで私は善玉菌のビフィズス菌と酪酸産生菌とを一つの菌群としてまとめ、長寿菌と名付けました」。辨野先生は、新たに健康長寿の腸内バランス「黄金比」として、長寿菌6割、悪玉菌1割、その他の日和見菌3割が長生きできる腸内細菌の割合として新たに位置づけたのである。「大腸内で酪酸産生菌により産生された酪酸は肥満予防や腸管機能の活性化に寄与し、ビフィズス菌と共同して、腸内環境改善・健腸長寿に貢献してくれるのです」と解説。この長寿菌をもつ者を「腸能力者」と呼んでいる。

「腸能力者」になるための「最高の腸活」とは

 そんな長寿菌が良く働く腸内環境をもつ「腸能力者」になるためにはどのような腸活をすれば良いのか。その条件として、① 50%は運動、② 40%は野菜や豆類、きのこ類、海藻類などの食物繊維の摂取、③ 10%はヨーグルト・乳酸菌飲料や納豆などの発酵食品の摂取の3つを挙げる。「健康長寿地域の人の特徴として、坂道が多い場所や、高齢でも現役で畑仕事をするなど、日常生活の中で体が鍛きたえられる環境にあります。足腰の運動によって、腸と背骨の間にあるインナーマッスルの腸腰筋が鍛えられます。腸腰筋は背骨から足の付け根にわたる大腰筋と一緒に『ウンチを出す力』に貢献します。腸腰筋が衰えていると腸のぜん動運動が起こりにくくなり、便秘となるのです。ですから腸活に運動が必要なのです。また腸内環境は食生活で制御できるので、例えば、酪酸菌は食物繊維をエサにして酪酸を生み出すため、野菜中心の食物繊維や発酵食品を毎日コツコツと摂取することことも必要です」

ウンチも見た目9割便活は体からのお便り

「ちなみにウンチの成分を知ってますか?ウンチは約80%が水分です。残りの%が消化吸収されなかった食べ物のカス、消化液、脱落した消化器の粘膜、そして腸内細菌で構成されています」と快活に語る辨野先生は腸活の最後の仕上げは便べん活かつだと続けます。「ウンチとは便は腸がどんな状態にあるかを見た目で教えてくれます。ウンチを見れば体の健康状態が分かります。例えば、いきまず、無理せずにストーン!と出る快便の時は、だいたい体調も良いと感じている時でしょう。一方、便秘や下痢をしている時やものすごく臭いウンチの時は、体調が思わしくない時でしょう。ですから排便をする度に自分のウンチをチェックして、体調がどうウンチの違いに出ているかを把握するようにしましょう。私が考える理想のウンチは、毎日、力まずに出て、黄色かやや褐かっ色しょくの、バナナ2、3本分の量(200〜300g)。硬すぎず柔らかすぎず、臭うけれどキツ過ぎない匂い……といったもの。個人差はあれだいたい誰でも一致します。これを理想としながら毎日規則的にウンチ・チェックをしていると、食べ物や体調の些さ細さいな変化でもウンチに違いがあることが分かってきます。ですからウンチの変化に応じて食生活の見直しなど腸活も変化させる必要があるのです」辨野さんは、ウンチとは毎日自分でできるチェックであると同時に体から健康状態を知らせる「お便たより」でもあると言います。さらに健康長寿のお墨付けとしてこう締めくくる。「毎日、理想のウンチを出せるようになれば、もうあなたは腸活の達人。腸能力者の仲間入り」だと。

一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長 辨野義己さん
細菌学者。農学博士。1948年大阪生まれ。酪農学園大学獣医学部卒業。東京農工大学大学院獣医学専攻を経て理化学研究所へ。およそ半世紀にわたって腸内フローラの分類と生態を研究し続けている。2021年、(一財)辨野腸内フローラ研究所を立ち上げた。「ウンチ博士」としてお馴染み。著書に『長寿菌まで育てる最高の腸活』(宝島社)など多数。

取材・文:横関寿寛/イラスト:朝倉千夏

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