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往時の「怖」を体感できる…季節外れの怪異スポット巡り|現代に遺る怪談の舞台

全国には現在も、不思議な逸話が遺る場所がある。夏は終わっても、怖いものが見たいと思うあなたのために、いくつかの怪異スポットを紹介しよう。読むも読まぬも自由、くれぐれも自己責任で…。

■「七不思議」の端緒となった寺……大中寺(栃木県)

不断のかまど

『雨月物語』にも登場する大中寺には七不思議が伝わる。そのひとつ「不断のかまど」を紹介しよう。
 ある修行僧が疲れたために竈の中に入って寝ていたところ、それを知らずに誰かが火をつけてしまい、修行僧は焼け死んでしまった。
 その後、夢枕にその修行僧が現れ「最初から火さえついていれば、こんなことにはならなかった」と言ったため、それ以降は火を絶やさないようにしたという。

 その他の七不思議は、「油坂」「根なしの藤」「馬首の井戸」「不開の雪隠」「東山一口拍子木」「枕返しの間」。いまも境内にそれらの逸話に関する史跡が残る。ここから全国各地で七不思議が流行り始めた。

■庶民に親しまれた怪談スポット……置行堀(東京都)

 これは本所(東京都墨田区)に伝わる七不思議のひとつ。
 釣った魚を持ち帰ろうとすると、堀の中から「置いてけ、置いてけ」と声が聞こえ、逃げ帰ると魚が一匹もいなかった、という話。
 現在も、清澄通り沿いには史跡案内板が置かれている。

■禁足地と畏怖された……八幡の藪知らず(千葉県)

現在の八幡の藪知らず

「足を踏み入れると、二度と出てこられなくなる」という神隠しの伝承とともに有名なのが「八幡の藪知らず」。JR本八幡駅の近くに現存し、地元民は畏敬の念をもって決して立ち入らない。

■天守に怪異が住むといわれる……姫路城(兵庫県)

『今昔画図続百鬼』鳥山石燕画 長壁姫 (九州大学附属図書館所蔵)部分。

 姫路城の天守には長壁姫(おさかべひめ)という妖怪が隠れ住んでおり、年に1度だけ城主と会って城の運命を告げていたという。
 ちなみに、1779年に刊行された鳥山石燕の妖怪画集では、長壁姫はコウモリを従えた老女の姿で描かれている。

■冥界への入り口……六道の辻(京都府)

「六道」とは、仏教でいうところの死後、輪廻転生する地獄道、修羅道などのこと。六道の辻の所在地が、平安京の火葬地だった鳥辺野の入口に当たり、現世と他界の境だと考えられている。

■最古の化物・がごぜが現れた……元興寺(奈良県)

『画図百鬼夜行』より、左ページに「元興寺(がごぜ)」が描かれている(国立国会図書館蔵)。

 がごぜとは、飛鳥時代に奈良県の元興寺に現れたといわれる妖怪。お化けを意味する児童語のガゴゼやガゴジはこの元興寺(がんごうじ)が由来とされる。
「画図百鬼夜行」のような古典の妖怪画では、がごぜは僧形の鬼の姿で描かれる。

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飯倉 義之

いいくら・よしゆき 1975年、千葉県生まれ。 國學院大學大学院修了後、国際日本文化研究センター機関研究員等を経て、現職。専門分野は口承文芸学、現代民俗論。怪異・怪談、妖怪伝承に造詣が深く、妖怪をこよなく愛し、研究室は全国で集めた妖怪グッズであふれている。著書に『鬼と異形の民俗学』(ウェッジ)など多数。

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