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旬を食べよう。冬の京都で愉しむ京野菜の魅力。予約の取れない有名店と地域に根ざした八百屋さんに聞く。

「京野菜」という響きに、どんな印象を持つだろう。高級なもの、伝統的なもの……。知っているようで実はあまり知らないし、食べたことがないという読者も多いのではないだろうか。

 そもそも、京野菜とは何だろう。その定義は曖昧ではあるが、一般的には「京の伝統野菜」または「ブランド京野菜」のことを指す。「京の伝統野菜」は、1988年3月に京都府農林水産部によって定められた。「①明治以前に導入されたもの ②京都府内全域が対象」などの5つが定義され、絶滅したものを含めると全部で37品目が登録されている。一方「ブランド京野菜」は、公益社団法人京のふるさと産品協会が認証しているもの。目印としてKをシンボルにしたマークが貼られ、こちらは20品目が指定されている。冬が旬の聖護院(しょうごいん)大根など、そのどちらにも当てはまる野菜もある。

 かつて都として栄えていた京都には、全国各地から優れた人や技術が集まってきた。その中には、献上品としての野菜もあった。京都の豊富な地下水脈や寒暖差が激しい気候は、野菜の栽培に適したもの。恵まれた環境と人々の技術によって、京野菜は独自の発展を遂げてきたのである。また近年の研究によって、他の野菜にはない健康維持に役立つ機能性成分が、豊富に含まれていることが分かってきたのだそうだ。

 今でも京都を始め、全国で愛されている京野菜。本記事では、京野菜を「買える場所」「味わえる場所」として、京都市内の2店舗を紹介する。

創業九十余年、旬の野菜が集う八百屋『西喜商店』

 京都駅から電車で1駅、JR梅小路京都西駅から徒歩10分のところに、八百屋『西喜商店』は建つ。創業は大正時代の末期と、その歴史は90年以上。3年前に移転し、現在の場所に店舗を構えている。2015年からお店を守る近藤貴馬さんは、その4代目だ。

 西喜商店のすぐ隣には、京都中央卸売市場がある。ここは、日本で最初に開設された中央卸売市場。新鮮な生鮮食品が集まる、京都屈指の食の拠点だ。西喜商店は、この市場の場外売店という権利を有している。つまり、京都中から集められた新鮮な野菜が、毎日お店に並ぶのである。

「冬だったら、聖護院大根に金時人参、九条ネギ、堀川ごぼう……。京野菜だから特別なのではなく、当たり前のように店頭で扱っています」。

 並んでいる京野菜を見てみると、意外にも高額でないことに驚く。それもそのはず。旬なので量が採れる、量が採れるので価格も落ち着くというロジックだ。

「京野菜は、時期外れのものは店頭には並びません。そもそも冬に夏の野菜は採れませんから。つまりそのとき手に入れることができる京野菜は、みんな旬のもので、みんな美味しいということです」。

 また八百屋として、旬の野菜を循環させていきたいと近藤さんは言う。野菜が地産地消されれば、農家も生産を続けることができ、引いてはその土地の文化を守ることにつながる。京野菜の名前を聞いたことはあっても、実際に見たことがある人は少ないかもしれない。お店でも、旬の野菜より、府外産のじゃがいもや玉ねぎなどの使いやすい野菜の方が良く売れるのだそうだ。それは決して悪いことではないが、地元の野菜も食べてみたいと思えるような発信をし、良い循環を生み出していきたいと近藤さんは行動し続けている。

「おすすめの調理方法を聞かれることがありますが、旬のものは、シンプルな調理だけで充分美味しく食べられます。じゃがいもの代わりに、聖護院大根をカレーに入れてみても良いんですよ。使ったことがない野菜だからと臆することなく、ぜひ挑戦してみてほしいですね」

西喜商店
〒600-8847
京都府京都市下京区朱雀分木町市有地
TEL: 075-314-5034
営業時間:9:30-17:30
定休日:水曜、日曜・祝日(臨時休業あり)
TEL: 075-314-5034
https://nishikisyouten.com/

朝採れの野菜を、美味しくいただく『煮野菜 おにかい』

 旬の京野菜を美味しく食べよう。そんなコンセプトを掲げている『おにかい』は、煮野菜の専門店だ。お店は京都・河原町駅から徒歩一分の、細い路地の途中に建つ。白い暖簾をくぐり、一段一段階段を上った先には、賑やかなオープンキッチンが待つ。

 カウンターに座ると、目の前にはお皿に盛られた色とりどりの野菜がずらっと並ぶ。それらはなんと自社で管理する農園で、毎朝収穫しているというのだから驚きだ。

「冬野菜は糖分を蓄えながら育つので、甘さと旨味が増すのが特徴です」。そう教えてくれたのは店長の竹内祥悟さん。根菜類は味がしっかりしみ込むように、ことこと煮込んで。葉物は色が変わりすぎないように、さっと湯通しをして。旬の野菜をより美味しく味わえるようにと、日々追求している。

 九条ネギがたっぷり使われた炊き込みご飯は、人気メニューのひとつ。蓋を開けた途端に立ち上る湯気からは、さわやかに柚子が香る。お椀の真ん中に堂々と鎮座するのは、キンメダイとこれまた旬の魚。ほぐして口に運ぶと、九条ネギのシャキシャキした食感、魚の旨味、ふわっとしたご飯の甘さが上質なハーモニーを奏でる。

 締めには、おでんの出汁をかけてお茶漬けに。動物性の食品を一切使わず野菜だけで取られた出汁は、さっぱりまろやか。

 その他にも、刺し身に添えられたワサビ醤油漬けの壬生菜、カニ味噌が乗った大根など、一皿一皿独特ながら本格派の味が揃う。系列店は、京都市内に7店舗。それぞれがまったく別々のコンセプトを掲げ、メニューも調理方法も異なるので、お店ごとに楽しみが待っている。

煮野菜 おにかい
〒604-8026
京都府京都市中京区米屋町388 二階
TEL: 075-314-5034
営業時間:17:00~23:00(LO22:30)
定休日:不定休
TEL: 075-223-5052
http://isozumi.jp/onikai/

 春夏秋冬、それぞれの旬がある。だからこそ一期一会の味わいがある。暖かい春も待ち遠しいが、ぜひ、今だけの出会いを楽しんでみてはいかがだろうか。

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小黒恵太朗

おぐろ・けいたろう 1992年5月10日生まれ。新潟県長岡市出身。立命館大学経営学部卒。リクルートにてゼクシィの法人営業を経験した後、東京の制作会社に転職。 職人の手仕事を中心に、一部上場企業や地方自治体、全国誌など、各方面で写真撮影や執筆を担当する。2020年3月、京都に移住。同年8月に「ひとへや」の屋号で開業し、活動中。

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