天下分け目の戦いの舞台となった岐阜県・関ケ原。この地に建つ「岐阜関ケ原古戦場記念館」(JR関ヶ原駅から徒歩10分)を会場に、「大関ケ原祭2024」(〜10月20日まで)が開催されています。メインイベントの日程は、10月19日(土)と、最終日の10月20日(日)です。編集部では、関ケ原の戦いの決戦日、9月15日とその前日に取材に行ってきました。体験・見学をしたのは、小和田哲男館長の解説付きウォーキングツアーと、のろしの再現です。【後編】では、9月15日に行われた開戦の合図「のろし」再現や、館内の魅力、近隣の観光地を紹介します。
9月15日朝8時、開戦の合図「のろし」を再現
さかのぼること424年前。1600年9月15日(旧暦)に関ケ原の戦いが起こりました。西軍の竹中重門と黒田長政は標高164mの丘陵地・岡山(丸山)に布陣し、戦機を見て開戦ののろしを上げました。
関ケ原町内では毎年、9月15日の午前8時から町内の防災無線を通してほら貝の音が響き、岡山烽火場からのろしがあげられています。岐阜関ケ原古戦場記念館の5階から岡山の方を見守っていると、今年も無事に真っ白ののろしが上がりました。
のろしとは、煙をあげて離れた場所へ情報を伝達する手段でした。記念館から岡山烽火場までは1kmほど。これだけ離れていても煙をしっかり目視で確認でき、のろしの有効性を実感しました。
岡山烽火場でのろし上げの手順を見学
しばらくのろしを見た後は、歩いて岡山烽火場へ移動しました。ここでは、「関ケ原のろしの会」の皆さんがのろしをあげる作業をされていました。
燃料には、スギの葉を生のまま使うそうです。燃えにくい方が煙が出るので、あえて水をかけています。
2005年からここでのろし上げをしてきた同会ですが、今年をもって解散するそうです。大きな理由は高齢化。煙突が長持ちせず3年おきに作り替えなければならず、加えてスギの葉を集めるのも、設営にも、かなり体力がいるとのこと。来年以降、新たな担い手が見つかることを祈ります。
迫力満点!鉄砲隊の演武を間近で
のろしをあげる側では、鉄砲隊の演武も行われていました。「狙うは、石田三成!」という掛け声のもと、一列に並んだ鉄砲隊が一斉に発射。身がすくむような爆発音ともに白い煙が上がります。
昔の火縄銃は乾燥した竹が使われていました。今でも関ケ原のろしの会の皆さんが見本として作られています。虫が寄り付かない12月の闇夜に竹を採り、1年間乾燥させて、節を2つ抜きます。その後、着火のための18mmの穴を開けて、縄を巻いて完成するそうです。
動く屏風がお出迎え、館内を見学
ここで記念館をご紹介します。1階ではオリジナルのグラウンド・ビジョンとシアターを視聴できます。(参考記事はこちら)
2階は史料で関ケ原の歴史を学べる展示室です。入り口にある大きな屏風は、なんと屏風に描かれた武将たちが動きます。映像作家の重田佑介さんが制作されたもので、関ケ原の戦いの様子を描いた「関ヶ原群像図屏風」と「関ヶ原山水図屏風」を1時間ごとに入れ替えて流しています。大き目のドット絵で描かれたピクセルアニメーションで、屏風の新しい楽しみ方ですね。
展示室には、甲冑の複製品や記念館所蔵の古文書や小刀などの史料が展示されています。目玉の「関ヶ原合戦図屏風」(関ケ原町歴史民俗学習館所蔵/岐阜関ケ原古戦場記念館寄託)は、普段は複製品が展示されていますが、今年11月24日までの秋季特別展「関ケ原−よみがえる天下分け目の戦い−」限定で実物が見られます。
古戦場をぐるりと見渡す展望室
はじめにのろしを見学した5階の展望室は、360度ガラス張りです。関ケ原古戦場全体を見渡せます。足元には大きな空撮地図も。どの武将がどのあたりに陣地を構えていたのかを目で確認できます。
レストランにはクスッと笑えるメニューがずらり
お土産ショップとレストランは別館にあります。お土産ショップには200点ほどのオリジナルアイテムと、800点ほどの岐阜県名産品が並んでいます。「関ケ原メモリアル御朱印」は決戦地や桃配山、笹尾山など15種類ありますが、実際に行った場所のものしか買えません!レジで、現地で撮った写真を見せれば購入できます。
レストランとカフェのメニュー名はとてもユニーク。「戦略武将カレー」「裏切りカルボナーラ」など名前で選びたくなるものばかり。パフェに至っては「たぬき親父パフェ(徳川家康)」「乱髪パフェ(石田三成)」「ほろ酔いパフェ(小早川秀秋)」「頭巾パフェ(大谷吉継)」と、本人たちが生きてたら怒られそうなネーミングです。
いただいた「戦略武将カレー」(1,380円)は、お肉がほろほろで、野菜の具材は大きく、上品な一品でした。次に訪れたときは、パフェもいただきたいものです。
年間で最も楽しめる時期は「大関ケ原祭2024」
前編で紹介した史跡めぐりも合わせれば、まる一日楽しめる記念館。ガイドツアーでお世話になった小和田哲男館長はこの場所の魅力を「古戦場自体は各地にありますが、実際に現地を歩いて、戦いの様子を想像したり、武将たちの位置関係を体感したり、武将の気持ちを感じられるのは、関ケ原が一番だと思います。古戦場の中心にある記念館で情報を頭に入れて現地を歩くと、より深く関ケ原のことを理解できます」と話していらっしゃいました。
いつ訪れても楽しい場所ではありますが、ぜひ催し物が豊富な「大関ケ原祭2024」の期間内に足を運んでみてください。催しの詳細は前編記事の最後をご覧ください。
車で行ける関連観光地「大垣城」「墨俣一夜城」など
「大垣城」
石田三成が西軍の本拠地とした大垣城。関ケ原の戦いの前哨戦と言われる「杭瀬川の戦い」は現在の大垣市内で起こりました。珍しい4層4階の復元天守では史料展示のほか、杭瀬川の戦いのジオラマ、自由に触れるレプリカの火縄銃と槍、おあむ物語のアニメーションなどで大垣城を中心とした歴史を学べます。
住所:岐阜県大垣市郭町2-52
料金:大人200円(郷土館との共通券)
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:火曜(祝日の場合は開館し、翌日を休館)、祝日の翌日(日曜または火曜にあたる時はその翌日を休館、月曜または土曜にあたる時はその翌々日が休館)
、12/29~1/3
記念館からのアクセス:車で約25分/JR関ケ原駅から大垣駅まで約11分、駅から歩いて7分
https://www.city.ogaki.lg.jp/0000000577.html
「奥の細道むすびの地記念館」
大垣城を起点に水門川沿いを1時間ほどかけて散策し、奥の細道むすびの地記念館へ。松尾芭蕉や奥の細道、大垣の偉人たちに関する資料を展示しています。
住所:岐阜県大垣市船町2-26-1
料金:大人300円
開館時間:9時~17時、休館日:12/29~1/3
http://www.basho-ogaki.jp/
▼奥の細道むすびの地記念館第40回企画展「川と道の織りなす芭蕉の旅」を、2024年11月17日(土)まで開催中
http://www.basho-ogaki.jp/tenji/tenji/index.html
「墨俣一夜城」
木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)が一夜にして築き上げたと伝わります。木曽川と長良川が合流する地形を生かし、川を堀としました。織田信長はここを拠点にして、悲願の美濃制覇を達成したのです。現在は歴史資料館として模擬天守が建てられていますが、当時は天守は作られませんでした。
住所:岐阜県大垣市墨俣町墨俣1742-1
料金:大人200円
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館し、翌日を休館)、祝日の翌日(日曜にあたる時はその翌々日を休館、月曜にあたる時はその翌日を休館、土曜にあたるときはその翌週の火曜を休館)
、12/29~1/3
※桜まつり期間中(3月下旬〜4月上旬)および、桜満開時の臨時開館あり
記念館からのアクセス:車で約30分/JR関ケ原駅から大垣駅まで約11分、バス大垣駅前から墨俣まで約20分、下車後歩いて12分
https://www.city.ogaki.lg.jp/0000000723.html
大関ケ原祭2024ホームページ
https://daisekigaharasai.pref.gifu.lg.jp/
岐阜関ケ原古戦場記念館
〒503-1501 岐阜県不破郡関ケ原町関ケ原894-55
TEL: 0584-47-6070
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、12/29~1/3
入館料:一般500円、高校生・大学生300円、中学生以下は無料
※2024年10月8日(火)から11月24日(日)の秋季特別展の期間は、一般1,000円、大学生・高校生800円となります。
※この期間以外でも、企画展等の開催時は特別料金となる場合があります。
アクセス:JR関ヶ原駅から徒歩10分、関ヶ原ICから車で5分
https://sekigahara.pref.gifu.lg.jp/