日本で稲作が広がり、定住文化が根付いた弥生時代。稲作に必要な土地や水などをめぐる争いが始まった時代とされています。こうした争いから集落を防御するために築かれたのが、集落の周囲に堀(壕)をめぐらせた環壕(かんごう)集落です。数ある環壕集落のなかでも、日本最大規模を誇る弥生時代の環壕集落跡が、佐賀県の「吉野ヶ里遺跡」。現在は「吉野ヶ里歴史公園」として整備されています。その見どころを紹介します。
約117haもの敷地に弥生時代の景色を再現!「吉野ヶ里歴史公園」
吉野ヶ里遺跡とは、佐賀県の吉野ヶ里町と神埼市にまたがった日本最大規模の遺跡です。弥生時代における「クニ」の中心的な集落の全貌や、弥生時代700年間の移り変わりを知ることができ、日本の古代の歴史を解き明かす上で、極めて貴重な資料や情報が集まっています。
遺跡から想定される建物などの様子が、古代中国の魏志倭人伝に出てくる「邪馬台国」の時代を彷彿とさせるもので、国の特別史跡に指定されています。また、有柄銅剣(ゆうへいどうけん)やガラス製管玉などの出土品は国の重要文化財に指定されています。
吉野ヶ里遺跡は現在、保存と、当時の施設の復元や発掘物の展示などを通じて、弥生時代を体感できる場を創出することを目的に作られた「吉野ヶ里歴史公園」(2001年開園)として親しまれています。約117haもの広大な敷地に、巨大な環壕集落が復元され、弥生時代にタイムスリップしたかのような風景が広がる場所です。4つのゾーンに分かれていて、弥生時代の生活を体感できるさまざまな体験プログラムも用意されています。それぞれのゾーンの特徴をご紹介します。
まずはここから!映像施設やレストランが入った”歴史公園センター”が目印「入口ゾーン」(東口)
JR吉野ヶ里公園駅と国道385号線側からの入口(東口)に「歴史公園センター」があります。センター内の「ガイダンスルーム」では、吉野ヶ里遺跡の概要などをパネルや映像で学べます。「ミニシアター」では、吉野ヶ里の歴史や公園ができるまでの過程、復元建物の内部の様子を紹介した“よみがえる弥生の都市”という約12分の映画が放映されています。地元の食材を使った料理を楽しめる「レストラン」、佐賀県の特産品や公園のキャラクターグッズなどが買える「売店」もあります。
これぞ吉野ヶ里遺跡!環壕集落が復元された「環壕集落ゾーン」
いわゆる「遺跡エリア」です。物見櫓(ものみやぐら)や竪穴住居(たてあなじゅうきょ)、高床倉庫(たかゆかそうこ)などの98棟の復元建物と、壕や城柵で弥生時代の大規模環壕集落が再現されています。
復元建物は、見栄えが良くなるように配置されているのではなく、実際に発見された遺構の真上に復元整備されていて、弥生人がかつて見ていた風景そのままが再現されています。中でも注目してほしいのが「南内郭(みなみないかく)」、「北内郭(きたないかく)」、「北墳丘墓(きたふんきゅうぼ)」です。
●南内郭
王などの支配者層が住んでいたと考えられているエリアです。物見櫓4棟、竪穴住居11棟のほか、集会の館や煮炊き屋など、合わせて20棟の建物が復元されています。物見櫓の高さはなんと12メートル。上まで登ると、弥生人と同じ景色を見渡せます。竪穴住居の中にもぜひ入ってみてください。
●北内郭
重要な物事についての話し合いや祭祀などが行われていたと考えられるエリア。直径40~50cmの柱16本、高さ16メートルの巨大な主祭殿(下の写真の一番大きい建物)など9棟の建物が復元されています
●北墳丘墓
吉野ヶ里集落の歴代の王の墓が埋葬されていると考えられる特別なお墓です。重要文化財の有柄銅剣とガラス製管玉もここから見つかりました。ここには、本物の14基の甕棺(かめかん)や出土品レプリカが展示されています。
このほかにも、一般の人々が住んでいたと考えられ、高床建物や竪穴住居などが復元されている「南のムラ」、北内郭の祭祀で使用する道具などが作られていた場所と考えられている「中のムラ」、倉庫群があり、市が開かれていたところと考えられている「倉と市」など、見どころたくさんです。
弥生時代の森を再現!「古代の森ゾーン」、圧巻の甕棺も
発掘調査によって分かった、弥生時代に生えていたと考えられるカシやシイの照葉樹林や、クリなどの落葉樹を植樹して、弥生時代の森に近い植生を再現した森ゾーンがあります。北部九州特有の棺「甕棺」を全長300メートル、約500基の墓列として復元している「甕棺墓列」は圧巻です。
遊具や大芝生広場、野外炊事コーナーなど!レクレーショを楽しめる「古代の原ゾーン」
広大な芝生広場や複合遊具などの楽しい遊具があるエリアのほか、野外炊事コーナーやグラウンド・ゴルフコースやディスクゴルのコースがあります。道具は無料で貸し出しをしてもらえます。子どもから大人までがのびのびと楽しめるゾーンです。
弥生時代にタイムスリップ!豊富な体験プログラム
吉野ヶ里歴史公園は、古代の文化に触れられる体験プログラムが充実しています。南のムラにある「弥生くらし館」と古代の森ゾーンにある「古代の森体験館」で体験できるモノづくりを紹介します。
勾玉づくりや火おこしができる「弥生くらし館」
⚫️勾玉づくり体験
石に下絵を描き砥石で削って形を整え、紙やすりで磨いて勾玉を作ります
所要時間:約1時間
料金:200円、または250円(石の色によって異なる)
開催日:毎日
⚫️石包丁づくり体験
稲穂を摘み取るために使われていた「石包丁」を作ります
所要時間:約40分
料金:300円
開催日:毎日
⚫️火おこし体験
火切りうすという板と舞錐(まいきり)という棒で火種をつくり、その火種を麻ひもに着火させるという古代の方法にチャレンジします
所要時間:約30分
料金:1セット100円(1セット2~3名)
開催日:毎日 ※天候によって中止の場合あり
⚫️鋳込み体験
低温で溶ける合金を溶かして型に流し込み、出土品である銅鐸や鏡、有柄銅剣のミニチュアを作ります
所要時間:約30分~60分 ※製作するものによって異なる
料金:700円~2000円
開催日:土・日・祝日
組ひもづくりと木工クラフト「古代の森体験館」
⚫️組ひもづくり
色とりどりに染めた麻紐から2~4色を選び、紐を指にかけて順番に編んでいきます
所要時間:約40分
料金:250円
開催日:毎日
⚫️木工クラフト
公園内の森で採取した材料で思い想いに木工品をつくります
所要時間:約60分
料金:100円
開催日:毎日
レストランでは、弥生時代をイメージしたお食事を楽しんで
歴史公園センターにあるレストランでは、吉野ヶ里ならではの地元食材を使った料理を楽しめます。おすすめは、弥生時代をイメージした限定メニュー「古代貝汁御膳」。有明産のアサリや海苔など佐賀の食材にこだわった逸品。毎日数量限定なので、お早めに!
ほかにも、定食や単品メニューもそろっています。ご飯には、古代米のひとつ「赤米」が使用されていて、食事でも、古代にタイムスリップした気持ちを味わえますよ。
レストランに併設した売店では、佐賀県の特産品やキャラクターグッズなどが販売されています。
吉野ヶ里歴史公園
〒842-0035 佐賀県神埼郡吉野ヶ里町田手1843
TEL 0952-55-9333(吉野ヶ里公園管理センター)
営業時間/9:00~17:00(9月~5月)、9:00~18:00(6月~8月)
入 園 料/大人(15歳以上)460円、シルバー(65歳以上)200円、中学生以下無料
※(団体料金/20名以上適用):大人(15歳以上)280円、シルバー(65歳以上)200円、中学生以下無料
駐車料金/普通車310円、二輪車100円
休 園 日/12月31日、1月の第3月曜日とその翌日
アクセス/車 → 高速長崎自動車道東脊振I.Cから約5分
JR → 博多~九州新幹線(博多駅~新鳥栖駅)約14分
新鳥栖駅~吉野ヶ里公園駅まで約11分
吉野ヶ里公園駅から徒歩で約15分
公式ウェブサイト https://www.yoshinogari.jp/