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読切

厳しい自然環境に耐え抜き、地球上に拡散した人類の辿った道筋

取材・文/OFFICE-SANGA

アフリカからインドを経て我が祖先の辿った道

 ユーグレナでの取材を終え、事務所に戻った私の手の中には、検査キットの小さな箱があった。DNA解析とはいったい、どのようなことをしなければいけないのか。未知の解析に対する好奇心、何をするのかという不安と高揚感が交差するなかで、私は梱包をあけてみた。
 解析という言葉から連想したことといえば、遠心分離機のようなもので血液など自分から採取したものを使うということが予想されたが、同封されていたのは小さな試験管とロート状のもの。説明書を読むと、自分の唾液を3ccほど、ロートを使って試験管の中に採取するだけ。実際に解析をする部署では、大掛かりな装置はあるのかもしれないが、被験者はこの簡単な作業で採取した唾液を解析センターに同封された封筒で郵送するだけだ。当日のうちに採取を終えた私は、ドキドキしながらポストへと足を運んだ。投函してから約6週間。解析終了の知らせとともに、WEBで結果を確認することができるようになる。混みあっているときには6週間以上かかることもあるようだが、たまたま空いていたのか、通知を受け取るまでに要した時間は約4週間。さっそくWEBにアクセスすることにした。自分の祖先がどこから来たのか。もし数あるハプログループに属していない、ルーツ不明であったらどうしよう、という気持ちが複雑に交差しながら、ブラウザに表示された結果は「D」グループ。日本人の2.5人にひとりがそのグループに属する、非常にスタンダードなものであった。
 このグループは約3万5000年前、ユーラシア大陸を海岸沿いに移動して東アジアに移動してきた集団の中で生まれたと考えられているそうだ。その後、東アジアに幅広く拡散し、またベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸にも進出している集団らしい。それがおおよそ1万年ほど前であり、以来ご先祖様はこの東アジアで子孫を残し、私が日本に存在しているわけだ。

厳しい大自然の環境を生き抜いた祖先の証とは

 ルーツがわかると、ご先祖様たちが長年かけて移動をするなかでの苦労が脳裏を過る。現代社会のように飛行機はおろか、自動車すら影も形もない時代。それこそ文明と呼べるようなものすら存在しない時代に、原生林の生い茂る起伏の激しい大陸を移動しながら、大自然の驚異と戦い、この地へと辿り着いたわけだ。人類のルーツ自体はそもそもアフリカ大陸の南部とされている。約7~8万年前に、小さな生命体のひとつとして地球に生まれた人類は、その後、約2万年の歳月を経てインド西岸あたりに移動をする。私の属するDグループは、そこで産声をあげたそうだ。当時は地表の多くが氷と雪に覆われた時代。人類が生存を続けるためには、過酷ともいえる環境だったに違いない。日本という四季に恵まれた国に住むにもかかわらず、冬の寒さに震えているのとはわけが違う。生きる=命がけの光景が目に浮かぶような自然環境の中での生活を余儀なくされたのだろう。多くの命が自然との共存に失敗して散っていったに違いない。しかし、私のご先祖様は過酷な条件に対して、知恵を絞って生き抜いたのだ。今、ここに私が生きていることこそ、彼らの生命力の集大成ともいえる結晶なのではないだろうか。

科学の発展で徐々に失われた祖先への敬意を取り戻す転機

 核家族化が進む日本において、親族間のつながりは年々希薄なものとなっている。同時に墓参りのような先祖供養の行事さえ、インターネットで済ませてしまう時代に差し掛かっている。このような時代を、ご先祖様が見たら、どのように感じるのか。日本人の中で失われ始めている先祖供養とは、こうした彼らの積み重ねた歴史に対する敬意ではないのか。

 科学の発展で、私たちは人類のルーツどころか、自身のDNAからその祖先の歩みを知ることができるようになった。半分興味本位で取り組んだ解析ではあったのだが、個人的には自らの生い立ちを壮大なスケールで知る機会となった気がしている。同時に、今を生きている自身の在り方についても考えさせられた。難しく考えることなどないだろう。ただ、ルーツを知ることで、ご先祖様の苦難がわかる。その苦難の歴史の上に自分がいることを理解して、生あることに感謝する日を送りたい。同時に彼らが苦労のし甲斐があった、と思えるような子孫であることこそ、使命であるのかもしれない。

■今回の遺伝子解析に利用したサービス
「ユーグレナ・マイヘルス」
健康リスク・体質の遺伝的傾向と祖先のルーツの
300項目以上を解析できる遺伝子解析サービス。
\32,780(税込)
https://myhealth.euglena.jp/products/gene_analysis/

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