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5分でわかる 神社の作法と基礎知識|境内にあるもの、授与品の扱い方etc. 神社参拝の基本をおさらい

初詣をはじめとする年中行事や七五三などの人生儀礼などで訪れる神社は、日本人の暮らしに欠かせない存在だ。そんな身近な神社にまつわる基礎知識をご紹介。おみくじを引き出しにしまってはいけない? 天神様の境内にはなぜ牛がいる?…等々、参拝前におさらいしよう。

神社のことをよく知れば参拝はもっと楽しくなる

 日本古来の信仰を伝える場である神社は、日本人にとってもっとも親しい場所のひとつといえよう。しかし、そこにどのようなものがあり、どのようにお参りすべきかは、意外に知られていない。
 國學院大學日本文化研究所所長の平藤喜久子さんは、「神社の社殿や鳥居の形などは、神社が建てられた時代や地域性といったものを反映しているのです」と語る。
 その神社がどんな神様を祀っているか、いつ創建されたのかが分かれば、参拝はもっと楽しくなるだろう。
 そこで神社に着いたらまず境内の入口に立てられている社号標やご祭神・由緒などを記した説明板を見るようにしたい(すべての神社にあるわけではない)。事前に神社のホームページなどを閲覧しておくのもいいだろう。
 そして、いよいよ境内に入るわけだが、その前に鳥居のところでまず一礼をする。神様がお住まいになる神域に入らせていただくのであるから、敬意を表するのである。この時、鳥居の形に注目するのもお忘れなく。
 境内に入ったら参道の中央(正中という)を避けて歩く。正中は神様の通り道だからだ。ただし、初詣などの混雑時は例外。「空気を読んで状況に応じた参拝をすることも大事です」と平藤さん。
 続いて手水舎で手と口を清める。これは全身を清める禊みそぎを簡略化したもの。日本の神様はけがれを嫌うので、参拝する時は心身ともに清浄であるように努めねばならない。 参拝はまず御本殿から(実際には本殿の前に建つ拝殿で礼拝を行う)。続いて摂社・末社をお参りする。参拝の目的が摂社・末社であっても、御本殿より先にお参りするのはご祭神に対して失礼になる。
 ましてや、まっ先に授与所に行ってご朱印やお守りなどをいただくのは論外。そうしたものは参拝した証にいただくものだからだ(ただし、あらかじめご朱印帳を授与所に預けるように指示している神社ではそれに従う)。
 お参りがすむとすぐに帰ってしまう人もいるが、神社の境内にあるのは本殿・摂社・末社だけではない。
 参道にある狛犬や灯籠などの石造物には彫刻としてすぐれたものや歴史的に貴重なものも少なくない。富士塚や土俵などが造られていることもある。石碑に神社の意外な歴史が隠されていることもある。
 拝殿や楼門にどんな彫刻がなされているか、天井にはどんな絵が描かれているのか、古い絵馬や奉納額が残されていないか、そんなことを観察するのも楽しい。

鳥居の形と構造
地図記号になっていることからもわかるように、鳥居は神社の象徴であり目印。神明系は柱も笠木も丸太で、彩色されないことが多い。明神系は笠木が角柱で反りがあり、下に島木がつく。朱色に塗られることがある。

神社の建造物には何がある?

  • 鳥居(とりい): 神社のシンボルであり、神域との境界を示す象徴的な門。2本の柱と2本の横木(上を笠木、下を貫という)というシンプルな構造だが、バリエーションが多い。簡素な神明系と装飾的な明神系の大きく2種に分けられる。
  • 社号標(しゃごうひょう): 境内の入口に立てられる標識。神社の名前のほか、社格(「式内社」「官幣大社」などの神社の格式)も記されることがある。
  • 手水舎(てみずや): 「ちょうずや」とも読む。参拝前に手と口を清める場所。左手→右手→口(左手で水を受ける)→左手と清めるのが基本的作法。
  • 社務所(しゃむしょ): 神社の事務作業などを行うところ。神札・お守りやご朱印などの授与所を兼ねていることもある。正式参拝はこちらで申し込む。
  • 本殿(ほんでん): 神社のご祭神を祀る社殿。拝殿の奥にあり参道からは見えないことが多いが、さまざまな建築様式があり、建てられた時代や地域性を示していることがある。山などをご神体とする神社では本殿をもたないこともある。
  • 拝殿(はいでん): 本殿の前に建てられる礼拝のための社殿。本殿より大きいことが多い。本殿との間に幣殿などの社殿が建てられることもある。なお、拝殿内に上がり玉串を捧げて礼拝することを正式参拝という。拝殿がない神社もある。
  • 舞殿(まいでん): ご祭神に神楽などの芸能を奉納するための社殿で神楽殿ともいう。平安時代末頃より造られるようになり、鎌倉時代に普及したと考えられている。神社によっては参道の中央にあって拝殿を兼ねていることもある。
  • 摂社(せっしゃ): 境内にある小さな社のうち比較的大きなものをいう。本殿ご祭神の親類など関係が深い神やその土地の神を祀ることが多い。
  • 末社(まっしゃ): 境内にある小さなお社のうち比較的小さなものをいう。かつては別の神社であったものや路傍などで祀られていた社のこともある。

境内にあるものにも意味がある

  • 注連縄(しめなわ): 七五三縄・〆縄・標縄とも書く。神聖な場所や物であることを示す藁縄。形は地域によって異なる。はさみ込む紙は紙垂(しで)という。
  • 賽銭箱(さいせんばこ): お賽銭を奉納するための箱。入れてよいのはお賽銭だけ。酒や食品などの奉納物は、定められた場所か社務所に持っていくこと。
  • 御鈴(おりん): 拝殿に下げられていて参拝時に鳴らすもの。鈴はその音色で参拝者を清め、魔を避けるとされる。乱暴に鳴らしてはいけない。
  • 狛犬(こまいぬ): 神社を守護する聖なる犬。正しくはツノがあり口を閉じるほうが狛犬で、ツノがなく口を開いたほうは獅子だとする。稲荷社の参道脇には狐の像があるが、これは狛犬ではなく神様のお使いで神使という。
  • 神使(しんし):稲荷社の境内には狛犬ではなく神狐の像がある。これは稲荷神のお使いなので神使という。神使は神様によって異なり、春日社の鹿、日吉・日枝社の猿、天満宮の牛、八幡宮の鳩、熊野社の烏(八咫烏)などがある。
天満宮のご祭神・菅原道真公は丑年の生まれで、牛に関する逸話が多い。境内の牛像は撫で牛といい、撫でるとご利益があるという。

ご利益に与る「授与品」の心得

神社参拝でどうしても気になってしまうのが、お守りやご朱印などの授与品。お正月には、破魔矢や干支の絵馬といった期間限定の授与品も頒布される。楽しみではあるけれども、注意しなければいけないこともある。

お守り(守札) お守り袋に入れて携帯するお札

携帯できるようにした神札のことで守り札ともいう。錦などで作られた守り袋に入れられて授与されることが多いので袋の美麗さなどで選びがちだが、本体は中に納められた神札。古くは首から下げるものであったが、近年はさまざまな形態・素材のものがある。

破魔矢 魔を祓い幸運を射止める縁起物

御神矢ともいう。文字通り魔を追い払う縁起物で、正月に授与する神社が多い。本来は破魔弓とセットになっており、かつては男児の初正月祝いの贈り物とされていた(女児は羽子板)。正月に矢を射って豊凶などを占った神社儀礼に由来するという。

絵馬 目標を書いて神様に誓いを立てる

古くは雨乞いなどの祈願を行う際に馬を神社に奉納していた。しかし、費用も手間もかかることから、木や粘土で馬を作り奉納することもあった。これが発展して絵馬となった。すでに奈良時代には絵馬の奉納が行われていた。近年は参拝記念に持ち帰る人も多い。

おみくじ 吉凶に関わらず生活の指針にする

神の意向を確かめるために占いをすることは古代より行われており、クジもそのひとつであった。『日本書紀』には、有間皇子が謀反の吉凶をクジで占ったことが記されている。現在のおみくじの形式は、平安時代の僧侶・良源が作ったともいわれるが伝説の域を出ない。

神札・お守りは神様の分身、授かった後の扱い方が大切

 神社参拝の楽しみのひとつに、授与所でいただくお札・お守りや縁起物がある。初詣ではお札と干支の絵馬をいただくといったふうに、決まり事にしているご家庭も多いだろう。せっかくのいただきものなので、きちんとお祀りできるよう正しい知識をもっておこう。
 神社の授与品にはご祭神の分霊や神威が宿るお札類と、おみくじや干支の置物といった縁起物の2種類がある。
 お札は家庭でもお参りができるように授けられるものなので、正式には神棚にお祀りする。最近は狭い家でもお祀りしやすいお札立てもあるが、それも用意できない場合は、タンスの上などに清浄な紙を敷いてお祀りする。
 1年経ったら授かった神社にお納めし新しいお札をいただくのが基本だが、参拝の記念にとっておいてもよいという。「粗末にしないということが大切なのです」と平藤さんは言う。「引き出しの奥で埃をかぶっているというのでは、神様に失礼だし、授かった意味がありませんね」
 身につけるお札といえるお守りも心構えは同じだ。複数の社寺のものをもつことは問題ない。 破魔矢はどこに飾るのか決まりはないが、やはり神棚や床の間、玄関、鴨居の上などの清浄な場所がいいだろう。
 絵馬・おみくじ・干支の置物といった縁起物はお札などと違い神霊が宿るものではないが、神社からの授かり物ということでは同じなので「粗末にしない」のが原則。
 絵馬は願い事を書いて奉納するものなので正確には縁起物ではないが、絵柄が美しいものが多く、正月限定のものもあるので持ち帰る人も多い。
 もちろんそれ自体はよいことなのだが、他の土産物と一緒にしまい込んでしまってはもったいない。目立つところに飾って、参拝した時の清々しい気持ちを振り返るようにしたい。
 おみくじも最近はバリエーションが増えている。フィギュアつきであったり水に浸けると文面が現れたり…。運勢を示す文章もいろいろだ。
 悪い運勢が出ると気になってしまうものだが、「細かい内容に一喜一憂するのではなく、どうしてそのクジを神様から授かることになったのか、その意味を考えることが重要です」
 気に入らない内容だから捨ててしまうというのは、もちろんダメ。指定された場所に結んでくるか、自らへの戒めとして大切にとっておくようにしよう。大吉のおみくじを持ち帰っても、粗末に扱うと運が逃げるかもしれないから要注意だ。

  1. お守りや御朱印を受けるのは、参拝をしてから: この神社にはどんなお札やお守り、縁起物があるのだろう? 気になるところだが、神社はお参りをする場なので、まずは御本殿を参拝すること。お札・お守り・ご朱印などはお参りした証にいただくものだ。
  2. 古いお札やお守りは神社へお返しして、新たに授かる: 日本の神様は年ごとに霊力をよみがえらせると信じられている。お札・お守りも同様で、年ごとに新しいものをいただくのが原則。ただし、ものによって交換の時期や方法が異なるので神社にお尋ねするとよい。
  3. 引き出しに入れっぱなしにするなど、粗末に扱わない: お札・お守りはご祭神の神霊が宿る神聖なもの。ご朱印や縁起物も神様からのいただきもの。乱暴に扱ったり不浄なところに置くといった粗末な扱いをしてはいけない。引き出しにしまったまま忘れてしまうのもダメ。

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平藤 喜久子

ひらふじ きくこ 國學院大學神道文化学部教授・日本文化研究所所長。 学習院大学大学院博士課程後期修了、博士(日本語日本文学)。専門は神話学。 著書に『神社ってどんなところ?』(筑摩書房)、『日本の神様 解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『神の文化史事典』(白水社・共著)などがある。

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