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清水が湧き大カツラがそそり立つ神秘的な「仙境」|奥宮巡礼③ 軍刀利神社(山梨県)

奥宮。そこは「はじまりの場所」であり、魂の根源である。
本社より奥に位置する神様がおわす領域。
原点回帰と再生のための神社参詣に出かけてみよう。

清水が湧き大カツラがそそり立つ神秘的な「仙境」

軍刀利神社の本社拝殿。厄除け、招福・縁結びの御利益で知られ、近年パワースポットとして人気を集めている。

 JR上野原駅から井戸行きバスに乗り、その終点から谷川沿いに山を登るとやがて長い石段があらわれる。登りつめた先にある軍刀利神社を詣で、さらに谷筋を登っていくと「奥之院」にたどり着く。

 仙人が住まう「仙境」とは、こういう場所をいうのかもしれない。たくさんのヒコバエ(若木)をまとった大カツラの樹相、歴史を偲ばせる石段とお社、彼岸と此岸を分けるように横切る清流と赤い橋。月並みな表現だが、夢に出てきそうな光景である。

奥之院の景観。大カツラは近くの水源から湧き出す谷川のほとりに立ち、幹周りは約9m、樹高は31m。

 当地に伝わる伝説では、この山の頂に祠(元宮)があり、その扉を開けたところ、さっと白光が走り、数百m下の大カツラに御神体が降り立ち、豪雨になった。村人らがカツラのたもとに行くと、そこに黒光りする木像があり、その像を神社本殿に祀り籠めたところ、豪雨がぴたりとやんだという。

 その「木像」は、当社本来の祭神・軍荼利明王の像だろう。この明王は水をつかさどる龍蛇の支配者といわれ、その霊験信仰が伝説の背景にあったのはまちがいない。

 ともあれ、「水木様」として崇められているという大カツラを擁する〝仙境〟の景観は、そんな伝説もさもありなんと思わせるのだ。

軍刀利山を下山すると、山々の奥に見事な富士山があらわれる。
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本田 不二雄

ほんだ・ふじお 1963年熊本県生まれ。 ノンフィクションライター、編集者。 おもに一般向け宗教書シリーズの編集制作・執筆に長く携わる。 著書に、『ミステリーな仏像』『神木探偵』『異界神社』(駒草出版)、『噂の神社めぐり』(学研プラス)、『今を生きるための密教』(天夢人)、『神社ご利益大全』(KADOKAWA)、『弘法大師空海読本』(原書房)などがある。

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