奥宮。そこは「はじまりの場所」であり、魂の根源である。
本社より奥に位置する神様がおわす領域。
原点回帰と再生のための神社参詣に出かけてみよう。
清水が湧き大カツラがそそり立つ神秘的な「仙境」
JR上野原駅から井戸行きバスに乗り、その終点から谷川沿いに山を登るとやがて長い石段があらわれる。登りつめた先にある軍刀利神社を詣で、さらに谷筋を登っていくと「奥之院」にたどり着く。
仙人が住まう「仙境」とは、こういう場所をいうのかもしれない。たくさんのヒコバエ(若木)をまとった大カツラの樹相、歴史を偲ばせる石段とお社、彼岸と此岸を分けるように横切る清流と赤い橋。月並みな表現だが、夢に出てきそうな光景である。
当地に伝わる伝説では、この山の頂に祠(元宮)があり、その扉を開けたところ、さっと白光が走り、数百m下の大カツラに御神体が降り立ち、豪雨が降り始めた。村人たちがカツラのたもとに行くと、黒光りする木像があり、その像を神社の本殿に祀ったところ、豪雨がぴたりとやんだという。
その「木像」は、当社本来の祭神・軍荼利明王の像だろう。この明王は水をつかさどる龍蛇の支配者といわれ、その霊験信仰が伝説の背景にあったのはまちがいない。
ともあれ、「水木様」として崇められているという大カツラを擁する〝仙境〟の景観は、そんな伝説もさもありなんと思わせるのだ。