【和歌山電鐵 貴志川線】奇跡の出会いが生んだローカル線
地域も存続活動に取り組み 「日本一心豊か」を目指す鉄道
貴志川線は1916(大正5)年に開業した和歌山県北部の14.3㎞を走る路線。沿線の日前宮、竈山神社、伊太祁曽神社に詣でる「三社参り」のため設立されたが赤字が続き、2005年には事業の廃止届が出され何度目かの廃線の危機に直面する。しかし通勤通学には欠かせない足だったため沿線住民が立ち上がり「貴志川線の未来を“つくる”会」を中心に様々な団体が存続に向けた活動を開始。その当時に相談を受けた現運営会社が住民に頼まれ公募に名乗り出て廃止を免れた。
民間鉄道会社で初のネコ駅長「たま」の就任は2007年1月。貴志駅隣接の商店の飼いネコだったが「たまの住処が撤去されるため貴志駅に住まわせて」と懇願され、たまの眼力に惹かれた小嶋光信社長が「駅長にしよう」と決断。その後全国的なたま駅長フィーバーが起こり、JR九州の「ななつ星」などを手掛ける水戸岡鋭治デザイナーの楽しい電車と相まって利用者が増加。現在、名誉永久駅長であるたまはプラットホーム内の「たま神社」に祀られ、今も貴志川線を見守っている。
今年1月5日、後継の「ニタマ」駅長は執行役員から社長代理に昇格。2月22日には「猫宮司」に就任した。また昨年、「おもちゃ電車」として活躍した車両を全面改装した博物館のような内装の「たま電車ミュージアム号」も誕生し沿線を盛り上げる。乗っても降りても心満たされる路線を体感しに行こう。