なぜこんな時刻表（ダイヤ）になったのか？ 残念時刻表を読み解く超ニッチ企画第3弾！
※時刻表は記事最後に掲載
山口県が誇る屈指の残念列車
ＪＲ西日本の小野田線は、山口県宇部市にある居能駅を起点とし、山口県山陽小野田市の小野田駅を終点とする11・６キロの本線と、途中の山陽小野田市の雀田駅から枝分かれして同じく山陽小野田市の長門本山駅を結ぶ２・３キロの支線の２つの線からなる短い路線だ。
居能駅はＪＲ宇部線との乗換駅で、宇部市の中心地はそこから宇部線で１・８キロ進んだところにある宇部新川駅にあるので、列車は上下線とも居能から宇部新川まで乗り入れている。そのため小野田線では宇部新川〜雀田〜小野田を走る本線を走るものと、宇部新川〜雀田〜長門本山と支線に乗り入れるもの、雀田〜長門本山の支線内だけを走るものの３つのタイプが運行されている。
この線の支線、雀田〜長門本山を走る列車の本数は非常に少ない。走るのは１日３往復。そのうち２往復が朝６時57分から７時41分の間に走ってしまい、最後の１本は18時台なので車窓を楽しみつつ乗車するためには、宇部市や山陽小野田市周辺で宿泊するか、日の長い季節に出かけるしかない。
そんな乗車するためには高いハードルがある小野田線の支線に残念な列車が走っている。それが長門本山18時37分発の普通宇部新川行だ。
長門本山駅を出発する最終列車となる宇部新川行は、６分かけて支線を走り雀田駅に18時43分に到着する。ここから本線に乗り入れ、居能駅からは宇部線に乗り入れ、宇部新川駅を目指すのだが、雀田駅で時間調整のためなんと37分も停車。宇部新川駅に到着するのは19時35分となっている。
長門本山駅から宇部新川駅までの距離は８・６キロで、この列車の所要時間は58分。調べたところ、徒歩によるルートは線路からやや離れたところを通り８・９㎞と距離が長くなるが、徒歩による移動時間は１時間49分。歩いてこのくらいということは、脚力に自信のある人ならランニングで列車に勝てる可能性がある。自転車を使えば確実に先着できるほど鈍足な列車なのだ。
雀田駅でのんびり停まっている間、小野田駅からやってきた列車が追い抜いていくので、宇部新川駅まで行く乗客がこの列車を乗り通すことはないと思われるが、旅好きで健脚自慢の友人がいたら、この鈍足列車の話をして、どちらが早いか勝負してもよいかもしれない。
静岡を走る歩きに負ける列車
静岡県には歩いて勝負したい列車が走っている。
三島駅を16時03分に出発する国府津行は東海道本線を西へと走り、隣の沼津駅から御殿場線に乗り入れ、御殿場経由で神奈川県の国府津駅へと向かうＪＲ東海の普通列車。この列車は沼津駅で20分も停車する。
そして、位置関係を記した概略図を見ていただけると分かる通り、沼津を出発した御殿場線は三島駅の近くを通っており、三島駅から１・５㎞離れたところに下土狩駅がある。
この列車が下土狩駅を出発するのは16時40分。37分で１・５㎞。グーグルマップの経路検索でも徒歩19分となっているので確実に勝てる。
東海道本線の時刻を調べてみると、この列車の１本後、三島駅を16時11分に出る島田行の普通列車が沼津駅で国府津行きに乗ることができるが、徒歩なら三島駅を16時15分に出れば余裕で下土狩駅に着いてしまう。
さらに時刻表を読み進めていくと、東京駅を15時27分に出発する新幹線の「こだま７３７号」を発見。ネットの時刻表をみると三島駅着16時17分と記されている。この「こだま号」で三島まで行っても、16時03分発の国府津行はもちろん、沼津で国府津行に追いつく16時11分発の島田行にも乗ることはできない。が、三島駅から下土狩駅まで早足で歩けば国府津行に乗ることができてしまう。鉄道ファンの私がいうのもなんだが、鉄道より徒歩の方が早いとは痛快だ。
このコラムが掲載される頃はまだ残暑が厳しいかもしれないが、暑さがひと段落したらチャレジしてみたい乗り継ぎだ。
