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政策起業家が日本の未来を変える! SDGsを牽引し、社会問題を解決する新たなイノベーターたち|認定NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹 × 一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員 向山淳

 政策起業家という単語に聞き覚えはあるだろうか。
 会社でもなく、役人でもなく、一個人として社会にコミットメントしていく存在のことだ。身近な問題や、生活の中での違和感。「仕方のないこと」で流されていたそこには社会をちょっとだけ良くするヒントが隠されているかもしれない。今回は政策起業家の交流プラットフォームPEP(ペップ)のディレクターの向山淳(むこうやまじゅん)さんと、認定NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹(こまざきひろき)さんが政策起業家の知られざる実像と未来について語り合った。

「(政策起業家とは)民間でありながら公のために世の中を変える、そして困っている人たちを助ける人」(駒崎)

向山淳さん(以下、向山)
 まずは政策起業家とは何者か、についてお話いただけますか。

駒崎弘樹さん(以下、駒崎)
 僕は認定NPO法人フローレンスという団体で保育園の運営や訪問型の病児保育(=子供の発熱時などにご自宅に伺いお預かりするサービス)、障がい児家庭支援などに取り組んでいます。その中でおかしいルールがたくさんあると感じていたんです。そうしたルールや法律を変えていく活動を10 年ぐらいやってきました。でも、そういう活動をなんと呼べばいいのかはわかりません。ロビイスト、フィクサー、革命家といった色んな呼ばれ方をしてきましたが、どうにもしっくり来なかった。
 あるとき、向山さんの上司でもあるアジア・パシフィック・イニシアティブ(以下、API)の船橋洋一先生が「駒崎君のやってることは政策起業だね」とおっしゃったんです。「なんですか? それは」と聞くと「アメリカや海外では民間の立場から、志を持って政策を変えていく、あるいは作っていく一個人が活躍してるんだよ」と教えていただいて。まさに僕のやっていることかもしれないなと。
 すなわち政策起業家とは、民間でありながら公のために、自分がなにか直接お金的に得するわけではないけれど世の中を変える、そして困っている人たちを助ける人。そんな具合かと思います。

向山
 ちなみに私はコマさんは革命家でもあると思いますけど笑

駒崎
 笑

向山
 実は私たちAPIで政策起業家に関するプロジェクトを立ち上げる際、半年くらいかけて一番議論したのが定義でした。そもそも政策起業家とは誰なのかと言ったとき、ロビイストではなく公益のために社会課題を解決する人、というのが一つ目の要件。
 もう一つはアジェンダをきちっと作っていく人。たとえば「コロナ禍でオンラインが進む」とか、何か時代が変わったりする時に新しい考え方を提起できるアジェンダセッティング力。それに加えて、”実装力”。言うだけではなく実際に法律まで変えていける。ルールを変えていける。そういったところを重視する点だと話していました。

駒崎
 提起して、泥臭く政治家の方や官僚の方にお願いしながら実装までやっていくのはなかなかハードルが高いです。しかし、PEPの中を見るといろんな業界でそういう動きをされている方々がいたことは発見でした。

向山
 それこそ復興、教育、テクノロジーから社会福祉まで、分野も幅広い。あと、国の法律を変えるというのもありますが、地方自治体の範囲で動いてらっしゃる方もたくさんいますよね。縦も横もすごく広がりがある。

駒崎
 法律というと国をイメージしがちですけど、僕らが住んでいる市や区といった単位の基礎自治体も実は同じです。基礎自治体には条例があって、それに我々の市民生活は規定されている。なら、何か不便なことがあったら条例で変えられるかもしれない。条例ですらなく、単に慣習で決まっていることもあります。つまり、地方自治体のレベルでも政策起業はできるんです。

■駒崎弘樹(こまざきひろき)
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、「地域の力によって病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたい」と考え、2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の共済型・訪問型の病児保育事業を開始した。
待機児童問題の解決のため、空き住戸を使い2010年に始めた「おうち保育園」がモデルとなった小規模保育所は、のちに制度化された。赤ちゃんの虐待死や障害児家庭の支援、子どもの貧困問題など、親子をとりまく様々な社会課題の解決に事業と政策提言で取り組む。
現在、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員を務める。著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)、『働き方革命』(ちくま新書)等。

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