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渡辺雅史の残念な鉄道時刻表

運行時間の3割が停車時間の、遅すぎる新幹線…!〜JR西日本 こだま837号 姫路駅7時10分発 博多行〜残念時刻表を読み解く超ニッチ企画!~「渡辺雅史の残念な鉄道時刻表」第5回

なぜこんな時刻表(ダイヤ)になったのか? 残念時刻表を読み解く超ニッチ企画第5弾!
 ※時刻表は記事最後に掲載


東海道・山陽新幹線の「こだま」。各駅に停車するこの列車は、駅に停車するたびに「のぞみ」「ひかり」などの速達タイプの列車に追い越される。例えば東京発14時57分発の「こだま735号」の場合。各駅の停車時間を見ると品川1分、新横浜1分、熱海1分、掛川2分、京都2分で、他の駅は3分以上停車となっている。つまり、東京〜新大阪の間にある15の駅のうち、10の駅で「のぞみ」や「ひかり」に追い越される、もしくは追い越しが可能なダイヤとなっている。臨時の「のぞみ」を運行させるため列車に追い抜かれることがないのに5分停車するなんてこともあるが、年末年始など利用者の多い時期は、途中停車する駅の3分の2で後から来た列車に追い抜かれるのだ。

次の駅まで10〜15分ほど走って、通過待ちで5分ほど停車という「こだま」は、各駅で駅弁やドリンクが購入できたり、ホームで一服する時間が確保できる。東海道新幹線は2023年10月末に普通車での車内販売が終了。2024年春には喫煙ルームも廃止され、今後「こだま」は熱々のコーヒーが好きな人や、愛煙家に注目される列車になるかもしれない。

時刻表でそんな「こだま」の時刻を調べていたら、残念な列車が目についた。「こだま837号」博多行だ。

姫路を7時10分に出発した列車は途中14の駅に停車し、11時6分、終点の博多に到着する。途中駅の停車時間を調べると、2分未満が相生、福山、新尾道、徳山だけなので、10の駅で「のぞみ」「ひかり」「みずほ」「さくら」に追い越される、もしくは追い越し可能となっている。

特に新岩国で10分、新下関で12分、岡山では15分も停車。列車運行の効率化が進められる今、追い越しのためにこれだけ長時間停車する例は首都圏の在来線でもなかなかみられない。

他の駅を見ても、新倉敷6分、三原5分、広島7分、小倉6分と5分以上停車する駅も多く、始発から終点までの所要時間3時間56分に対し停車時間の合計は1時間14分。約31.4%が止まっている時間という計算だ。

鉄道のダイヤは15秒単位で作成されているので、時刻表から読み取れる情報と実際の情報の間には若干の齟齬があるが、運行時間の3割以上が止まっているのに特急料金が必要な列車というのもなかなかのものだ。

そんなわけで、停車時間の長いこの列車を残念な列車に選んだのだが、一番残念なポイントは停車時間の割合ではない。ここまで読んできてお気づきの方もいるだろう。残念なのは小倉で6分停車することなのだ。

時刻表を見ると小倉到着は10時43分で発車は10時49分。その間に「のぞみ101号」がやってきて「こだま837号」を追い越している。各駅タイプの「こだま」が速達タイプの「のぞみ」に追い越されるというのは他の駅でもやっていること。だが双方の列車も小倉の次は終点の博多。小倉と博多の間に途中駅はないので「こだま837号」が6分停車しないで先に出てしまえば博多に先着可能なのだ。

山陽新幹線は使用している車両によって最高速度が異なる。「こだま837号」は700系を使っているので時速285キロ、N700系を使っている「のぞみ101号」は時速300キロだ。だから小倉で追い越されるダイヤかと思って見てみると、「こだま837号」の小倉〜博多の所要時間は17分。対して「のぞみ101号」は16分と1分しか変わらない。小倉の停車時間を1分なら「こだま」が博多に先着できるのだ。

先ほど触れたように列車のダイヤは15秒単位で作られていることや、博多に他の列車が停車していてホームが空いていないといった事情があってこのようなダイヤとなっているのだろう。が、終着駅1つ手前の小倉で走らない日もある臨時列車を待つために6分も停車。しかも時刻表で見る限りは小倉で追い越されるダイヤを組まなくても大丈夫そうに見えるところが面白い。

もし、この列車に乗りに行くとしたら、「のぞみ101号」が運転される日、厚狭から自由席に乗車して鈍足ぶりを楽しみたい。2本前の「こだま833号」の厚狭〜博多の所要時間は35分なのに「こだま837号」は53分もかかる。さらに小倉到着前に「この列車も小倉の次は博多ですが、博多までお急ぎの方は『のぞみ』をご利用ください」という車内アナウンスがあるのか、自由席の乗客は特急券を買い替えなくても乗車できる「のぞみ」に乗り換えてしまうのかを見てみたい。

ちなみに逆方向、博多を出て次の小倉で6〜7分停車して「みずほ」に追い越される「こだま」は1日4本走っている。だが逆方向の場合、博多出発の前に「小倉で追い越されます」みたいなアナウンスはないだろう。また「みずほ」が通過する新山口、徳山などを利用する人が乗り換えるという需要もある。そういったことを考えると、博多方向へ向かう「こだま」で唯一、小倉で「のぞみ」に追い越されるダイヤとなっている「こだま837号」は、新幹線の中でも屈指の残念な列車と言えるだろう。

JR西日本 こだま837号
姫路駅7時10分発 博多行


本記事は「一個人」2024年1月号に掲載した内容の増補版です。情報は発行時のものです。

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渡辺雅史

時刻表好きが嵩じ「時刻表探検家」を名乗るフリーライター。自宅に所蔵する時刻表は国内、海外のものを合わせて500冊以上。雑誌や書籍への執筆のほか、ラジオ番組の構成作家なども行う。著書に「銀座線の90年(河出書房新社)」「東京駅コンシェルジュの365日 業務日誌に見る乗客模様(交通新聞社新書)」など。

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