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「鬼」と書いて「きさらぎ」と読む!? 名字と行事の意外な関係|【珍名さん万歳】渡辺家では節分に豆をまかない?

意外と多い鬼と豆まきにまつわる名字

 立春を迎え、暦の上では春で、冬から春(大寒から立春)への節分である。元来、立春・立夏・立秋・立冬の前日を節分と言うが、一般的には春を迎える年の始めの立春前日を節分と言っている。節分と言えば、鬼と豆まきであるが、これに関する名字もある。今回は、節分に関する名字を紹介したい。

 節分(せつぶん)の名字は無いものの、鬼(おに・きさらぎ)さん・柊(ひいらぎ)さん・鰯(いわし)さん・豆(まめ)さん等の名字がある。鬼を「きさらぎ」と読むのは、2月を旧暦では如月(きさらぎ)と言うので、節分の鬼と掛け合わされて「鬼」を「きさらぎ」と読ませるものと思われる。
 鬼の付く名字は多く、鬼岩(おにいわ)・鬼形(おにがた)・鬼城(おにき)・鬼熊(おにくま)・鬼沢(おにざわ・きざわ)・鬼定(おにさだ)・鬼塚(おにつか)・鬼丸(おにまる)・鬼柳(おにやなぎ)・鬼追(きおい)・鬼久保(おにくぼ)…等である。

 節分と言えば、鬼を払うために豆まきをするのが当然と思われているが、ある名字の家では豆まきをしない風習もある。実は、鬼沢家では、自分が鬼(名字に鬼の文字)なので、豆まきをしないとか、豆をまく家でも「鬼は外」とは言わず、「福は内・福は内」と言うそうである。また、渡辺家でも、豆をまかない風習があると聞いた。初めて渡辺姓を名乗ったのは、渡辺綱(わたなべのつな)であり、渡辺綱は鬼退治で有名である。すなわち、渡辺綱が鬼を退治したので、鬼は来ないからか、渡辺家では豆をまかないそうである。

 季節の様々な行事があるが、名字によってそれらの形が変わることもまた名字の面白さである。

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たかのぶ・ゆきお 名字研究家。1956年、茨城県大子町生まれ。 高校の時から名字研究を始め、全国を旅しながら名字の由来やエピソード等を取材している。主な著書に『難読希姓辞典』『名字歳時記』『珍名さん』など。日本家系図学会員、茨城民族学会員、日本作家クラブ会員。

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