連載
2022/02/12
北欧屈指の絶景路線をたどりベルゲンへ~思い出のヨーロッパの鉄道紀行~
ノルウェーの首都オスロから489㎞の汽車旅
野田 隆
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オスロ中央駅からベルゲン駅へ

私は1996年夏に全線を走破した。当時、1日に数往復している急行列車には新型客車も使われていたけれど、私が乗った列車はいわゆる旧型客車による編成だった。いかにも汽車旅にふさわしい車両。オスロ中央駅からベルゲン駅までの7時間40分ほどの旅を振り返ってみよう。
胸を張ったように先頭が「く」の字形に尖った電気機関車に牽引された13両編成の列車がベルゲン行きの急行列車だった。機関車も客車も赤茶色のシックな装いである。ユーレイルパスを持っていたので私は10両目の1等車に乗車した。車内はコンパートメントではなく座席車。通路を挟んで2人掛けと1人掛けのゆったりしたシートが並んでいる。落ち着いたインテリアで応接間のような雰囲気だ。乗客のほとんどが観光客で、ヨーロッパ各国、アメリカ、それに日本や韓国などアジア系も混じっていた。



オスロを出て3時間半ほどでゴル駅着。側線が何本も並ぶかなり大きな駅だ。標高は207m。ここから本格的な山越え区間が始まる。右側に川を見ながらぐんぐん登っていく。単線なので、ときどき対向列車待ちのため小休止する。旅客列車のみならず長い編成の貨物列車ともすれ違う。ノルウェーばかりでなく北欧各国やフランス、イタリアの貨車もつながっていて国際的だ。

さらに登り、トンネルが連続する区間に差しかかる。雪除けのスノーシェッドもくぐる。木製の古いもので、木と木の隙間から陽の光が漏れてくる。高原状の地形が続き、山がなだらかに広がっていた。湖畔の駅ウスタオーセは標高990m。降りた人が去ってしまうと人気のない静かな駅となり、湖岸に打ち寄せる波の音だけが聞こえてくる。





トンネルを抜け、左手に入り江が見えると終点のベルゲン駅だ。こじんまりとはしているけれどドームで覆われた終着駅にふさわしい構内である。天井近くに白字で書かれていた「ようこそベルゲンへ」の文字が目に留まる。丸一日かけてやってきた港町ベルゲン。この街出身の作曲家グリーグのピアノ協奏曲のフィナーレのような高揚した気分で駅を出た。


WRITTEN BY
野田 隆
のだ・たかし
1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。
蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。
のだ・たかし
1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。
蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。
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